3つのキーワードで読み解く 若者に支持されるサービスのトレンド

発売中の『宣伝会議』2015年12月号では、「ネットサービスに見る、若者の新しい消費意識・価値観」を特集。10代後半から20代前半までの世代にスポットを当て、彼・彼女らの間で、いま流行っているネットサービスを取り上げています。今後、消費を牽引するデジタルネイティブ世代の新たな消費意識・価値観とは?国内のスタートアップ事情に詳しい梅木雄平氏が、若者の間でのトレンドを理解すべく、3つのキーワードを軸に読み解く。

若者ウケするサービスの傾向

光陰矢の如しと言える、インターネットサービスの隆盛の兆しは、若者の利用動向を押さえるのが定点観測地点の一つとして有用であろう。2015年現在では日本国内の20歳前後の若者の間で人気筆頭のサービスは、間違いなくInstagramだ。写真をアップするだけというシンプルなサービスだが、Facebookのような人間関係の煩わしさがない点も、若者ウケする要因の一つであろう。ここでは、特に若者の間で今後の利用が浸透しそうなサービスに焦点を当て、その傾向を紐解いていく。

2015年の日本の若者ウケするサービスの傾向は、3つのキーワードに集約できる。「クローズド」「日常の動画コンテンツ化」「エンタメのスマホ置き換え」だ。

若者の「クローズド」文化とは?

Snapchat

一足早く米国では動画コミュニケーションサービスのSnapchat(スナップチャット)が大人気だ。送信者が10秒以内の閲覧時間を設定し、受信者が閲次第、送られた動画や写真は消去されるというのが最大の特徴。すでに全世界で若者を中心に毎日1億人以上のユーザーが利用している。ちなみに、「動画が残らない」という点は、若者のセクスティング(性的なメッセージや画像などをやりとりする行為)での利用を促進して人気を博したという説もある。日本ではまだ流行していないというのが一般的な見解だが、聞くところによれば徐々に若者を中心としたユーザーが増えているという。

“カップルSNS”も若者の間でかなり浸透してきている。国内のカップルSNSといえばPairyが最古で、その後韓国のBetweenが上陸、最後に恋愛・婚活マッチングサービスpairsを提供するエウレカがCouplesで参入した。現在、若者カップルの間で一番使われているのはCouplesのようだ。Couplesのダウンロード数は2015年9月時点で300万人を突破。テレビCMとTwitterを中心としたプロモーションで若者の支持を広げた。

Facebookが日本でもコミュニケーションのインフラになったことを疑う人はいないと思うが、若者にとってFacebookはパブリックで居心地が悪い場となっているという声も聞く。親とフレンドになってしまっていることもあり、プライベートな内容を投稿しにくい若者もいることがその背景にある。つながりすぎたことの弊害から、クローズドで楽しむ方向へと文化の揺り戻しの過渡期にあると感じる。

カップルのキス動画まで!?日常の動画コンテンツ化

Netflix

2015年はようやくスマホ動画元年だという。9月には動画ストリーミングサービスのNetflixも上陸し、YouTubeやHuluと相まってスマホで動画を楽しめる環境が整いつつある。しかし、若者の間ではNetflixやHuluは課金サービスであることからも、そこまで浸透していないようだ。逆に無料のCGM(コンシューマー・ジェネレイティッド・メディア=ユーザー投稿型のメディア)サービスの動画をよく見るという声を聞く。

Hulu

若者の間ではTwitterも浸透率が高く、Twitterのタイムラインで流れてくる6秒動画サービスのVineを見る機会が少なくないという。Vineは自分で投稿できるニューヨーク発のCGMで、2012年にTwitterに買収されている。

日本発のスタートアップ動画サービスとしてはMixChannelとツイキャスが注目株であり、ともにCGMだ。MixChannelは2015年9月には400万DLを突破しており、その投稿動画に「カップルのキス動画」が少なくないという話は、大人にとっては信じがたい話として有名だ。

ツイキャス

ツイキャスは2015年9月時点で登録ユーザー数1000万人を超えるアプリで、ライブ中継ができるサービス。日本の若者のみならず、海外でも人気を博しており、初期はブラジルのユーザーが多かったという。ツイキャスで投稿されるライブ動画は、女子中学生や女子高生の日常的な動画も多い。女子大生の動画では「友達とナイトプールに行ってきた」という内容をライブ中継しており、日常の遊びの中でツイキャスしてフォロワーの反応を見てみるというのが、遊びの中に組み込まれている若者もいるそうである。

可処分時間(自由な時間)が多いことからも、こうした日常を動画コンテンツとして手軽に作成してアップする若者が増えている。スマホの普及や動画サービスの進化によって動画作成の敷居が下がり、日常を動画コンテンツ化する動きが加速したと思われる。

既存エンタメのスマホ置き換え

マンガボックス(DeNA)

スマホが生活インフラとして定着し、従来は他の媒体で楽しんでいたコンテンツをスマホで楽しむ環境も整いつつある。

古くから若者に人気のマンガでは、マンガボックス(DeNA)、LINEマンガ(LINE)、comico(NHN)などのアプリで読めるマンガが人気なようだ。ネット企業大手が提供するマンガサービスが強い一方で、無数のスタートアップ企業による参入も相次でいる。

LINEマンガ(LINE)

次に音楽。この夏、AWA(サイバーエージェント)、LINE MUSIC(LINE)、Apple Music(Apple)などのストリーミングサービスが相次いで登場した。当初は無料で提供していた各サービスも、2カ月目以降は月額課金へとシフト。無料期間中は利用する若者が多かったようだが、有料期間へ移行すると一定数が利用をやめているという声を聞く。音楽ストリーミングサービスはまだ日本で始まったばかりであり、今後定着していくにつれ、若者の中での浸透率も向上していくであろう。

comico(NHN)

最後にエンタメではないが、教育領域でもスマホ化が進んでいる。ライブ授業を提供するアオイゼミは東進ハイスクールのスマホ版のようなサービスで、大手予備校に通えない地方の受験生にとってはありがたいサービスだ。

若者の間で流行するサービスは、大人には受け入れづらいことも多いであろう。

しかし気づいたらコミュニケーションをはじめとするインフラになっていたということは、これまで幾度もあったことだ。本稿で紹介したサービス群が、若者の間のみでの流行で終わるのか、インフラと化すのか。いずれにしろ、その流行の変遷は、今後の消費トレンドを理解するうえでも注視しておくべきだろう。

詳細は、10月31日発売の『宣伝会議』2015年12月号をご覧ください。


梅木雄平
The Startup 代表取締役

国内スタートアップ企業の考察を配信する「The Startup」編集長。同サイト運営のThe Startup代表取締役。国内有数の規模を誇る有料オンラインサロンUmeki Salonを運営しながら 、上場企業との協業によるスタートアップへの投資買収支援事業や東京カレンダーWEBプロデューサーも手掛ける。

『宣伝会議』2015年12月号

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10月31日発売 定価1300円
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巻頭特集 ネットサービスに見る、若者の新しい消費意識・価値観

10代後半から20代前半までの若者世代では、どんなネットサービスが流行っているのか。今後、消費を牽引するデジタルネイティブ世代の新たな消費意識・価値観に迫ります。

  • 梅木雄平「3つのキーワードで読み解く 若者に支持されるサービスのトレンド」
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