​​広告ブロックに自主基準を グーグル、業界各社と対話の構え

「広告ブロックソフトウエアに対する自主的なガイドラインを設ける必要がある」。グーグルの広告・コマース担当上級副社長シュリダール・ラマスワミ氏は2日、宣伝会議/AdverTimesの取材に、こう答えた。グーグルの成長をけん引するモバイル分野にも「広告ブロック」の動きが浸透しはじめている。

「業界全体で基準を設け、それを満たした広告はブロックされないようにする必要があるだろう。悪意を持った広告もあるが、そうでない企業のほうが多いはずだ。消費者に受け入れられ、かつ掲載メディアの収益につながる広告について、いまこそ考えねばならない」

この度来日したグーグルの広告・コマース担当上級副社長シュリダール・ラマスワミ氏。「Webの利用体験を損ねる広告があることは承知している。かといって、すべての広告がブロックされるべきかどうか。業界全体で考える必要がある。その基準はどこか1社、ひとつの団体が決めることではない」

ラマスワミ上級副社長は、米インタラクティブ広告協会(IAB)をはじめ、メディアや広告会社などと協議を始める考え。その中には、グーグルのWebブラウザー制作チームはもちろん、モジラやアップル、マイクロソフトなど他社のブラウザー担当者も含まれるという。「数カ月かけて話し合う。2016年初めには明らかにできることがあるはずだ」

念頭には米アップルがiOSに加えた広告ブロック機能がある。スマートフォン全体シェアではグーグルのAndroidOSが優勢だが、米・中​など主要国のiPhoneユーザーは無視できない。米IDCの推計では、2015年7~9月期のiPhoneの世界出荷台数は、前年同期比22.2%増の4800万台​。最新のiPhone6Sと同6Sプラスは、発売週の出荷台数が1300万台を​超えた。

「iOS9で広告を含むコンテンツブロックができるようになった。広告ブロックは従来パソコン(PC)のブラウザーだけだったが、スマートフォンへも進出する端緒といえる。業界として、より積極的な行動を取るべきタイミングだ。オープンで自由なWebを支えているのは広告だ。そして“広告は誰のものか”、改めて考えねばならない」。

広告ブロックソフト大手、表示可否を審査するコミュニティ立ち上げ

「広告業界は消費者を無視できなくなる。彼らが思うままに広告を大量投下できた時代は終わった」――10月1日、ドイツの広告ブロック大手アイオー(Eyeo)の広報担当ベン・ウィリアムズ氏は、同社の企業ブログにつづった。同社は2016年初頭、「受け入れられる広告」を選んだり、監視したりする公開コミュニティを本格稼働させる。

アイオーは「AdBlock Plus(アドブロック・プラス)」という広告ブロックソフトウエアを提供している。各社のPC向けブラウザーだけでなく、AndroidやiOS向けブロックアプリ、ブラウザーもある。同社によるとユーザーは総計5000万人超で、米モジラ財団の「Firefox(ファイアフォックス)」だけでも、10月は日間平均2077万4000人が利用した。

独出版大手アクセル・シュプリンガーのタブロイド紙「Bild(ビルト)」は、パソコン、スマートフォン双方のオンライン版で「広告ブロックソフト」利用者のアクセスを制限した。制限ページでは、ブロックを解除するか、ほぼ広告なしで読める月額約400円(2.99ユーロ)の購読が勧められる。

「AdBlock Plus」の初期設定では、一部の広告は排除されない。いわゆる「ホワイトリスト」に入った広告はブロックされずに表示されるのだ。ソフト側の設定を変えれば、すべての広告を非表示にすることもできる。​

どの広告が​「ホワイトリスト」に入るかは、​ネット上の​フォーラムで​議論​して決められる。アイオーのマーシャ・グラント氏は「ホワイトリスト入りで資金提供を受ける場合もある」と話す。「リスト入りの後も基準を満たすかチェックを続けねばならない。一部の巨大Webサイトからその費用を受け取っている。ほとんどのサイトは無料だ」(同)

アイオーは今後、このコミュニティを進化させ、さらに自分たちは手を引くという。「我々とコミュニティが同一視されないようにするためだ。当社は今後、『受け入れられる広告』の基準、ホワイトリストに加わった企業について語らない。オープンなコミュニティが基準を進化させ、インターネットの商業利用と消費者の間を取り持つシステムとなる」(グラント氏)。

ホワイトリストは、iPhone向けの「Crystal(クリスタル)」ほか、競合他社の広告ブロックソフトにも公開、共有された。同一のリストを使うソフトは拡大する予定だ。「2016年初頭には、新生のコミュニティ最初の会合が開かれるだろう。広告会社やメディア、一般ユーザーから幹部メンバーの候補を探しているさなかだ」。​​


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