広報は開発者のインタビュアーにも?
砂流:「広報担当者は“代理の人”に留まっていていいのか?」という話はハッとさせられました。「自分ごと」の話にはストーリーがあるんですよね。
太田:当事者意識で語ってくださるお話にはストーリーがあるんですよね。代理になってしまうと、そのストーリーが見えない。
砂流:僕もアパレル系ECのPRの仕事をしているのですが、ストーリーづくりってこういうことなんだろうな、と思った経験があります。
その会社はシリコンバレーにあって、フルオーダーメードのシャツを売っているんですけど、社長にサービスを立ち上げたきっかけについて話を聞いていたら「シャツを買いに行くのが面倒だからサービスをつくった」って言っていたんですね。日本と違ってアメリカは車で20分とか走らないとショッピングができないので、だったらインターネットで自分好みのシャツをオーダーできて、全部完結すればいいじゃんと。
僕としてはこの話がおもしろかったんで、プレスリリースにこの話をいれたかったし、タイトルにもしたい勢いだったんです。けど、CEOからは「恵介、なにクレイジーなことをいってるんだ。もっといいところいっぱいあるだろう」って言われて。いや、当たり前な反応なんですけど(笑)。
結局、一文だけ、リリースの片隅に「服を買いに行くのがめんどくさい」というフレーズを入れる形になったんですが、この切り口がキッカケで「ねとらぼ」に取り上げてもらってるんですよね。「服を買いに行くのが面倒くさい」が、さらにパワーアップして「服を買いに行く服がなくてもOK」って変換されて。これもエピソードですよね。
太田:今、新しい見方がひとつ増えたんですけど、広報は「開発者のインタビュアー」になってもおもしろいかもしれないですね。「ものをつくる」当事者の人たちが気付かないユニークなストーリーがあって、それを砂流さんのような広報の方が引き出してみる、と。現場に近い広報担当者だから知れるストーリーって、もしかしたら私の探している「宝物」なのかもしれません。
砂流:今、いいキーワードいただきました! 話を聞ける環境にいても、開発者やキーパーソンに話を聞いていない人は多いと思います。話を聞いたとしても、プレスリリースをつくるために製品特長を教えてもらうだけだったりとか。リリースに盛り込むにも、記者に直接アプローチするときでもストーリーがあるに越したことはないので、広報は「開発者のインタビュアー」だと思ってストーリーを探すのが良さそうですね。
「ねとらぼ」編集記者・太田智美さん
アイティメディアのニュースサイト「ねとらぼ」の編集記者である太田智美さん。個人では「Pepper」を自費で購入し、一緒に生活するなど、ロボットパートナーとしても活動中。「スケスケに見えるドレス」なるアイテムの作成から記事化まで自分で行ったり、71万円の大金を積んで誰よりも早く「iPhone 6 Plus」の使い勝手を71万円の大金を使って検証した記事など、ヒット記事を連発しています。開発者が大好きで自分で「ものづくり」もしてしまう、新世代のアベンジャーズです。