吉田大八さんと澤本さんの不思議な初対面のエピソード
澤本:今は映画タイムなんですか?
吉田:脚本書いたり、いろいろ準備中です。
中村:ちなみにゲストに来られたきっかけでいうと、澤本さん、権八さんとは結構お仕事もされているんですか?
澤本:そうですね。僕は東京ガスをやっていただいたりして。映画の高尚な感じとは全く違う、「東京ガスストーリー」という企画を。
吉田:澤本さんと初めて会ったときに、女性っぽい人だなと思って。澤本さん、写真でしか見たことなかったの。
権八:えっ、写真を見て女性だと思っていたんですか!?
吉田:違う違う。打ち合わせに行ったら写真に似た人が1人で座っていたんですよ。似ているんだけど、服とか髪型がすごく女性っぽくて。プロデューサーと世間話しながら、その澤本さんはしゃべらないなぁと思ってチラチラ見ていたら、10分後くらいに本物の澤本さんが来た(笑)。電通の別の人(女性)でした。
一同:笑
権八:それが最初の出会いで。何年前ですか?
吉田:10年も経ってないと思いますけど。
権八:東京ガスが初めてですか?
吉田:その前に1回何かやったんですよ。
澤本:でも、ガスストーリーの印象がすごく強くて。
権八:あれは面白かったですね。妻夫木くんや小西真奈美ちゃんが出ていて。ベタな東京ラブストーリー的な。
澤本:ひどい・・・
権八:いやいや、ひどくないじゃないですか。
澤本:でも、ちゃんと撮っていただいてね。
吉田:それは、ちゃんと撮りますよ(笑)。
権八:映画見ちゃうと、こんなすごい人と仕事してたんだみたいな(笑)。
澤本:そうそう、過去をさかのぼられたら申し訳ないみたいな。
権八:そういう風に言われませんか?
吉田:全然言われないですよ。なんで? そんなに映画がちゃんとしてるってこと?
権八:映画ちゃんとしてるじゃないですか(笑)。
吉田:CMはちゃんとしてなかったんだ。 一生懸命やってたんだけど・・・
権八:いえ、CMもちゃんとしてるけど(笑)!そういう意味じゃなくて。ちなみに、僕は「明治おいしい牛乳」のCMを、結構な本数撮っていただきました。
CM「おいしい牛乳」を今でも超えられない?
吉田: 1年ぐらい前かな。自分で「おいしい牛乳」のCMを全部繋いで1本のDVDにして、見直して1人で笑ってました。あれすごく好きですね。あれを超える仕事がなかなかできてないよね。
権八:えっ、本当ですか!? うそ(笑)!
吉田:この頃は調子よかったなって思って。
澤本:今、絶好調じゃないですか。
権八:「おいしい牛乳」は最初の立ち上がりのときで、何年だっけ。2000年ぐらいですかね。
吉田:権八さんの企画がまず、大人をナメきった企画だったわけですよ(笑)。僕が一生懸命「そんなこと言わないでさ~」とか説得しながら、まとめた感じ。
中村:そうなんですか、権八さん?
権八:あははは!あながち間違ってないかも(笑)。まだCMをほとんどつくったことがない入社3年目くらいの頃で。そんな奴に社運を賭けた商品がなんで回ってきたのかよくわからないけど、優しい中野CDが僕にチャンスをくれて。パッケージがいい意味で天然な感じだったんで、タレントを出さずにパッケージを主役にして、いろいろなタイプをつくろうと。
澤本:「おいしい」が「やらしい」などになってるCMね。
吉田:だいたい一晩で企画するわけ。東北新社の会議室に手ブラで夜10時ぐらいに集まって、朝までかけてまとめて、昼にプレゼンして。たとえば10案ぐらい持っていって、そのうちいくつかは完全にNGだけど、あとは予算の中で撮っていいよみたいな話になる。それで5、6案つくって、そのうち3つがお蔵入りになって(笑)。
澤本:生存率がすごく低い(笑)。
吉田:そんなことが3、4年続いたかな。ほんと楽しかったですね。こんな仕事だけやって生きていけたらいいなって思った。
権八:本当ですか? そんなに楽しかったんだ。
吉田:えー、伝わってなかった(笑)?
権八:僕も楽しかったですよ! 僕から見たら大先輩だし、確かに今、吉田さんは冗談ぽく言いましたけど、僕はいい加減な頭おかしい企画を大量に出すから、いつも正していただいて、形にしていただいたというか。
吉田:権八さんはそのあと一気にメジャーになったから。ああいう、くだらないことやるチャンスはなかなかない感じですか。
権八:くだらないことをやろうとしているけど、ああいう、タレントも出てなくて、向こう見ずにやれた感じは最近あまりないですね。タレント出ないCMがそもそもね。
中村:大八さんはCMディレクターとして撮っていた時期から、「よし、映画やろう」と決めていたんですか?
吉田:学生の頃は自主映画をつくっていました。でも、CMをやりはじめてからはCMで頭がいっぱいだったから、正直それほど映画のことは考えなかった。でもインターネットがブロードバンドになった頃、動画コンテンツに興味を持つ人が増えて、ちょっとずつ僕らにも少し長いものをやるチャンスが回ってきた。それで、半分思い出したような感じで短編を作ったりして。その頃に、たまたま1本目の『腑抜けども~』の原作の小説を読んで、これは映画にできそうな感じがすると思って、実際に動いてみたら運良くトントン拍子に事が運んで、という感じでした。
澤本:自分から周りのプロデューサーの方に働きかけたんですか?
吉田:仲が良かったモンスターのプロデューサー柿本さんに原作を読ませて、誘いました。当時は単館向け映画にとっての状況が今とは全然違ったし。まぁ、なんでも最初は良いことしかイメージしないから。
澤本:大八さんもそうだけど、柿本さんも映画は初めてだったんだ。
吉田:そう、初めてだった。会社として出資することはあったかもしれないけど、自分で脚本作りからプロデュースするのは初めてだったはずです。