映画の脚本をつくるとき、原作は読み返さない
澤本:結構、短期間でつくられるじゃないですか。構想何年ではなく、スパスパと。
吉田:なんか、粗製乱造してるみたい(笑)。
権八:名作ばかりですよ!ホントに!
吉田:ホントですか? うそっぽいなあ(笑)。
澤本:大八さんが脚本を書かれるじゃないですか。
吉田:1人で書いたり、人と書いたり、打ち合わせして書いてもらったり。
澤本:脚本ってどれぐらいの期間で書くんですか?
吉田:人と書くとやっぱり時間がかかりますよね。『紙の月』は書いてもらったけど、1年ぐらいはかけた。『桐島~』も1年ぐらい。
中村:『ジャッジ!』はどれぐらいかかったんですか?
澤本:紆余曲折があったから、かかった時間としては5年ぐらい。2006年にいろいろな広告祭へ行って、「今度の広告祭でこういうことがあった」と話したら、みんなが面白いと言ってくれて、映画をつくろうという話になって。2007年ぐらいからはじまったんです。
権八:今、大八さんが書いているのはオリジナルですか?
吉田:まさに今書いてるのは、原作ものです。
権八:『ジャッジ!』は完全オリジナルじゃないですか。その違いはあるんですか? 時間のかかり具合など。
澤本:僕はオリジナルしかやったことないからわからない。
権八:大八さんは、オリジナルはやらないんですか?
吉田:オリジナルも今、1本進めてます。原作がやりやすいと思うのはCMディレクターだからだと思う。CMの企画は自分にとっては原作で、脚色は、企画に対して演出コンテを作る作業とすごく似てるんですよ。
澤本:原作本を映画にするときは原作の中にもセリフがいっぱいあるじゃないですか。ああいうのは自分の中ではどういう風に消化するんですか? その世界観をもらってセリフを変えちゃう?
吉田:あまり読み返さないですね。1回か2回読んだら、読後感をベースにどこが印象に残ったかと考えていく。そうすると、できあがったシーン自体は小説の中にはなかったりする。
権八:不思議だよね。
吉田:ちょっと迷ったときに確認のために読み直すことはあるけど、基本、文章をひとつひとつ、映像に置き換えてもしょうがないから。そういう意味ではCMの企画もざっくりしたコマが3コマとか、権八さんの3行くらいの殴り書きとか(笑)に対して演出として燃える、のがクリエイティブとしてはいい関係という気もします。
権八:たとえば、『紙の月』だったら、最後に宮沢りえさんが走って逃げるじゃないですか。あのシーンにすごく感動したんですけど、原作にはああいうシーンはあるんですか?
吉田:ないです。原作はタイかどこか、逃げていった先の外国で、国境を越えてまた別の国に逃げようとするけど、国境に警察がいて、そっちに歩いていくところまでなんですよね。私を捕まえてと。そういうことを感じさせて終わる。
中村:なるほど。
吉田:それを読んだときに、僕はここから先も見たいなと思った。たとえば、捕まろうとしたのに、何かの間違いで外に出ちゃったと。追っかけてきたからつい逃げちゃった。いつの間にか、なんで私逃げてるんだろうと思いながら走っている。そのチェイスの規模がどんどんでかくなって、ヘリで追っかける、ジャングルの中を1人で裸足で逃げる。とにかく、ヒロインの梨花が走るところを見たい。だから、「映画の3分の2ぐらいはそういうアクションになるけど、それでいい?」と最初プロデューサーに言った。
権八:この話はすごいですよ。
吉田:その一部が、最後まで残ったんですよ。映像化するときは、原作側が映画に委ねてくれるという信頼感とプレッシャーが両方必要です。
中村:残念ながらお時間がきてしまいました。みなさんの質問やお便り、就活に関するもの、何でも構いませんのでドシドシくださいませ。メールアドレスはsuguowa@tfm.co.jp。また、「すぐおわ」Facebookページにコメントを書いていただいたものもお便りとみなして、どんどん読んでいきます!
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構成・文 廣田喜昭