登壇者
- ビー・エム・ダブリュー Future Retail マーケット・インプリメンテーション・マネージャー 兼頭 義徳 氏
業界初の低金利ローンや3年間のアフターサービスプログラムなど革新的なサービスを展開してきたBMW。今、強化しているのが販売店におけるプレミアムな購買体験だ。
顧客が商品を購入する際、期待しているのは商品の性能やスタイルだけではない。検討期や購入時、購入後の店舗サービスについても期待を抱いている。「企業やブランドはこうした期待に応えるべく、質の高いサービスを提供し続けることが求められています」とBMWの兼頭義徳氏。特に近年、消費者の購買行動は変化し、「モノ」よりも「体験」が重視される傾向にあるものの、「自動車業界はセールスマンが顧客と一対一で商談し、仕様やオプションを説明しながら購入を促すイメージが強い。モノに集中している傾向は否めない」と指摘する。
商品をただ陳列するのではなく、使うことで得られる体験ごと売ることで新しい購買体験を提供できないか。こうした課題から同社が取り組んでいるのが顧客の視点に立ったプレミアム・リテール・エクスペリエンスの提供とそれによる顧客満足度の向上を目指す「フューチャー・リテール」というグローバルプロジェクトだ。
見て、触れて、そして試乗体験ができる場をつくる「マルチチャネル構想」、販売店の優秀な人材の確保・維持・教育を強化する「リテールHR」、客観的な視点から顧客対応のプロセスや品質を評価し、 その後の販売店への定期的なフィードバックを行い、 改善の継続と、『ぶれない』品質向上を目指す「ミステリーショッピング」、そして「プレミアムリテール体験」という3つの構想を掲げている。このプロジェクトは世界にあるBMW、MINI合わせた約4900の店舗を対象に、ドイツ本社が主導。顧客体験を重視し、ショールームにおけるカスタマージャーニーを意識することで、販売店での接客を根本的に見直し、顧客視点を徹底させることを目指す。
構想の一つ「プレミアムリテール体験」については、複数の取組みが進行している。販売店の全従業員の顧客志向の強化をする「カスタマー・トリートメント」では、おもてなし、立ち居振る舞いなど、日本ならではの行動指針も加え、顧客との重要な接点(キー・モーメント)を8つに整理し、感動を生む接客を目指す。
思わず入ってみたくなるショールームを実現する「EPoS」の取組みでは、お出迎えからアフターサービスまでさまざまなタッチポイントでIT技術を使ったプレミアム体験の創出に挑む。iPadを通じ迫力ある動画を顧客に試聴してもらうサービスもその一つだ。また販売ノルマにとらわれず、購入の検討やブランド理解促進を助け、試乗においても顧客視点でサポートを行うスタッフ「BMW/MINIジーニアス」も導入。マニュアルによる縛りのない接客、顧客のファン化を目指す。
こうしたフューチャー・リテールのプロジェクトは、これまでのサービス提供のあり方を見直し、全く新しい顧客体験を創造するための戦略だ。