映画を撮りはじめてからCMの撮影スタイルは変わった?
澤本:見てる人のことっておっしゃったけど、見てる側として、大八さんが小さい頃や若い頃に“この人のこの映画”を好きだったなど、影響されたものはあるんですか?
吉田:映画をそんなに見てなかったんですよね。浪人で上京するまで鹿児島にいたので。とにかく音楽が一番でした。
澤本:特にこの映画は大好きだ、この監督が好きだったというのはなく、東京に出てきてから映画というものに急速に接近したと?
吉田:そうですね。高校のときにパンクが好きで、そっちのミュージシャンがたくさん出ている映画があると知って、上京後にライブに行くようなつもりで見た映画があったんですね。それが石井聰亙監督の『爆裂都市』。それまでは映画ってただ見るものだったというか、作り手のいるプロダクトとして、あまり捉えていなかったんです。
中村:なるほど。
吉田:でも、『爆裂都市』は色々なところがぶっ壊れている映画で、これは時間がなくてこうなったんだろうなとか、めちゃくちゃ勢いだけだなとか、粗を探せばいっぱいあるけど、つくっている人がいるということを初めてちゃんとイメージできた映画だった。
中村:顔が見えるというか。
吉田:そうそう。それがすごく魅力的な映画だった。だから、映画館に繰り返し見に行くようになって、そのときに映画をつくる人がいる、仕事があるということを初めて意識した。きっかけはそれですね。
権八:きっかけとなった話が終わったところで、これ覚えていますか、大八さん(と言ってメモを取り出す)。
吉田:あぁ、谷口さんと作った。谷口さんは、「おいしい牛乳」のプロデューサーね。
中村:「おいしい牛乳」時代の資料ですか?
吉田:権八さんがあまりにも映画見てないって話になって。どの映画がいいんですか?と聞くから、映画好きの谷口さんと僕で、いろいろな映画を推薦したんですよ。
権八:これはだからもう、吉田大八ファンは垂涎のリストなわけですよ。
中村:この監督だったらこの作品を見なきゃみたいなことが書かれているわけですね。
吉田:なんか小賢しいね。
権八:いえいえ、当時2000年頃ですよ。15年ぐらい前。
吉田:まぁ、でも映画を見てない人ってうらやましいじゃないですか。まだこんなに楽しみが残ってるんだと。
澤本:全てが刺激になる。
吉田:今は映画見る?
権八:見ないです。
一同:笑
権八:結局見ない(笑)。そういう話を聞くのがすごく楽しくて。
吉田:何のためにこれ取っておいているの(笑)。
権八:こういうのが面白くて、とっているけど、結局何を見たかな。『ツイゴイネルワイゼン』見ましたね。
吉田:『ツイゴイネルワイゼン』? 『ツィゴイネルワイゼン』。
権八:それそれ。
吉田:この映画への興味のなさが権八さんの良いところです。
権八:いや、別にいいところじゃないんだけど(笑)。大八さんだけじゃなく、ナカテツ(中島哲也監督)にもよくアレ見ろコレ見ろと。大八さんみたくまだ見てないって羨ましいとか優しい言い方じゃなく、お前バカじゃねーの!みたいに怒りつつ色々教えてくれます(笑)。