「オンライン動画」を3つの機能で考える
編集部:前回の審査会では、「“ただ長いだけの広告”になってしまっている動画が増えていないか?」という危惧も出ていました。作り手は、何に注意すべきでしょうか?
木村:一口にオンライン動画と言っても、機能的には分化している。だから分けて考えるといいと思っているんです。広告としての動画は3つのカテゴリに大別できると思います。
一つは「バイラルムービー」。インパクトの大きな映像で視聴者を惹きつけ、誘引の役割を持つもの。BOVAの受賞作で言うと、先ほどの「忍者女子高生」がそうでしょう。
2つめは「エンタメコンテンツ」。例えば有名な映画監督のオリジナルムービーを配信するネスレ日本の「ネスレシアター」や、三井不動産レジデンシャルの「タイムスリップ!堀部安兵衛」が該当するかと。
川村:クラフトやストーリーテリングで見せるものですね。
木村:ええ、2003年に発表され、現在のオンライン動画の潮流の先駆けとなった「BMWfilm」の系譜です。
そして3つめは「ユーティリティコンテンツ」。今後拡大していくであろう、マニュアルやツールとして便利な動画です。そして残りが大きく「CM」とくくれるのではないかと。さっきの「ただの長い広告」という話もここですね。
川村:わかりやすいですね。「バイラル」「エンタメ」「ユーティリティ」。それぞれ機能がはっきりしていて。
木村:これ、“本屋さん”に例えるとさらにわかりやすいんです。バイラルは話題の新刊、エンタメはロングセラーや名作、ユーティリティは実用書というふうに。
お客さんに本棚からピックアップしてもらわないといけないところも、能動的なメディアの特性に近いでしょう。「CM」は本屋さんに置かれているチラシのようなイメージで。チラシよりも、本の方が魅力的だし、手に取りたくなりますよね。
いま本屋に世の中のあらゆる情報が並んでいるように、僕はこの先、情報はすべて動画になっていくと思っているんです。
澤本:その中で、このアワードでどんな作品を集めたいのか。テレビCMとは全く違う新しい形式の優れた映像を発掘するのであれば、いっそ15秒・30秒のテレビCMと同一のものは受け付けないというのもありですよね。
どっちつかずの作品が集まるよりも、「BOVAはあくまでもテレビCMとは違う、オンライン動画のフェスティバル」と線をひいた方がわかりやすい。
木村:カンヌライオンズでは今年から、地上波で1回でも放映された映像はオンライン部門に応募不可となったんですよね。それくらいハッキリ線引きしたほうが、応募する側も取り組みやすいかもしれない。