「収入減」になる理由を論理的に考える
考えるための資料として、また別のグラフをお見せします。博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が毎年、「メディア定点調査」を発表しています。今年も、Webで「メディア定点調査2015」としてグラフなどを公開してくれています。私のような者には大変ありがたい資料です。そこには、性年齢別のメディア接触時間のグラフが毎年出ています。いつも若者のテレビ・新聞の接触時間が減っていることばかりみつめていましたが、今年あれ?と思うことがあり、数年分を自分でグラフにしてみました。40代、50代、60代の年配層のテレビの数字だけを男性女性、それぞれ別の棒グラフにしたのです。単位は「分」です。
男性女性、それぞれを見比べると、とくに2014年と2015年で顕著な差が出ています。女性は50代と60代の時間がものすごく伸びています。でも男性はぐんと下がっています。
このグラフだけを見てすべてを判断するのは危険です。実際、もっと前の年はまた増えたり減ったりしているので、たまたま今年だけなのかもしれない。
でも、ここからこの一年で、年配女性のテレビ視聴時間が増え、年配男性は大きく減ったことは言える。
ああ、やはりテレビはおばさん化しているのではないでしょうか。
筆者はテレビが好きで、よく見ています。そして最近、強く感じていることがあります。テレビが好きなおれが、見たい番組が急に少なくなってきた。上のグラフは、自分の気持ちを言い表しているようなものなのです。
ゴールデンタイムにテレビをつけると、出てくる話題は健康ネタばかり。あるいはお掃除の知恵、洗濯のコツ、そんなのばっかり。生活に役立つちまちました話を、立派なタレントをひな壇に並べて次から次に送り出しています。もちろん私の奥さんは、ふんふんとうなづきながら見ています。けっこう集中していて、チャンネルを変えていいか聞くと「見てるんだけど」と言い放ちます。F3の心をがっちりつかんでいるのです。
テレビの制作スタッフは優秀です。ゴールデンやプライムタイムともなると、たくさんの構成作家やリサーチャーやADが、調べまくったネタが満載されています。健康とお掃除と洗濯の最新情報で番組が埋め尽くされているのです。
そんな番組を、たまに見た若者が、共感するはずありません。「ん?これちげえ。おれらのメディアじゃねえ」と決め込むでしょう。いまや若者がテレビ離れを起こしているのではなく、テレビの方が若者から離れているのです。
その結果が、視聴率がちょいと上がったくらいでは取り返しがつかない収入減につながっているのではないでしょうか。世帯視聴率だけを見ていると、論理的にこうなってしまいます。視聴率をいくら取ることができても、収入につながらないのであれば、何のための努力なのでしょうか。