情報拡散のポイントは「強い入り口」と「広がる出口」
鷹觜氏は、地域から世界へ情報を拡散する“鉄板セオリー”を「強い入り口、広がる出口」と紹介した。インターネットは“待ち”のメディアだ。そこでビジネスを成功させるには顧客が「これを買う」という強い目的を持って入る「強い入り口」が必要だ。浜のミサンガでは入り口として、人のエモーショナルな側面に訴える動画を制作した。「インターネットのページは口コミ製造工場。シェアしてもらいやすいキーワードやビジュアルをわかりやすく配置して情報が『広がる出口』を作る。それによって情報の拡散がスパイラルアップしていく図式をつくった」と鷹觜氏。「フラットな時代で一番価値があるのは“シェア”だ。シェアされるのは自分や自分の周りの人にとって有意義な情報で、そうした情報を発信できれば、資金力や規模の大小に関係なくどんな地域にも勝つチャンスがある」と強調した。
強い入り口と広がる出口を作り、デジタルを有効活用して今までにない地域の課題解決に挑んだ施策が「ライスコード」だ。青森県田舎館村は稲を色で植え分けて田んぼに絵を描く“田んぼアート”で観光客を集めていた。
地域が抱える課題は、田んぼアートを地元米の販売に結びつけることだ。田んぼアートという強い入り口はあるものの、購入やシェアを促す出口がなかった。
鷹觜氏は、同地を訪れた観光客がスマートフォンで田んぼアートを撮影していることに着目。写真を撮ったついでに地元の米を購入できるアプリ「ライスコード」を、広告の新メニューを自主開発する博報堂「スダラボ」のメンバーとともに開発した。アプリをダウンロードするためのポスターを入場待ちの場所に掲出して米を購入する仕組みをつくった。その結果、米の売り上げが大幅に拡大。海外でも高く評価され、52もの海外広告賞を受賞した。
地方の専門店がストーリー動画で情報発信
3つ目は、大型ショッピングセンターやネットショッピングの脅威といった、地方の専門店が抱える課題を解決したジュエリーかまた(青森県弘前市)の事例。現場のヒアリングから、オーダーメイドや修理といった大型ショッピングセンターやネットショッピングにはない固有の技術を洗い出したのち、消費者を主人公にしたストーリー仕立ての動画を制作し、何ができる宝石店なのかを伝えた。
長編動画は12月31日にテレビCMとして放映。口コミを聞きホームページに訪れた人向けに来店予約を促すフォームを用意してリアル店舗に誘導した。これによりWebサイトへの来訪率および、リアル店舗への送客が大幅に向上した。動画リサイクルによる行動デザインで「地方の専門店の情報発信から誘客までのひな型を作ることができた」 (鷹觜氏)。
鷹觜氏は「どの施策も心に刺さるコアアイデアの開発が重要だった。そこに新しいデジタルの仕組みを組み合わせることで、これからの広告は爆発的にスケールアップする可能性がある」と述べた。