「艇を空に飛ばすくらいのことをしよう」からのスタート
「グランブルーファンタジーは、日本のRPGが登場した頃から知っているメンバーが制作陣。ユーザーもこの時代にファンタジーを題材にしたゲームの楽しさを経験している、30歳前後の男性がメイン層です」と『グランブルーファンタジー』プロデューサーのCygames春田康一さんは話す。
同ゲームのキャラクターデザインは、ファイナルファンタジーなど数多くの大作RPGの制作に携わってきたグラフィックデザイナーの皆葉英夫さんが担当。音楽は同じくファイナルファンタジーシリーズの大半の楽曲を手がけてきた植松伸夫さんが担当し、ファンタジー好きにはたまらない布陣となっている。
そのよさを最大限に生かし、ゲーム内に登場するキャラクターは独特のテイストを持つCGになっており、キャラクター同士の会話もフルボイス(声優による生声)で吹き込まれているなど、世界観が綿密に作り込まれているのが、『グランブルーファンタジー』の特徴だ。
「パズルゲームなど、文章を読まなくてもいいスマホゲームが多い中、グランブルーファンタジーには“読むだけ”のシーンがある。フルボイスにしたのも、文字だけだとストーリーに十分入り込めないと考えたから。声を入れることで、キャラクターに演技をさせているんです」と春田さんは説明する。
今回の東京ゲームショウ出展のきっかけになったのは、広告企画会議での春田さんの何気ない一言。
「今後の広告企画を話し合っていたのですが、ありきたりな提案が多くて。自分が面白くないとやりたくない性質なので、『艇(ゲーム中に登場する騎空艇グランサイファー)を飛ばすくらいのことをしようよ』とぽろっと言ったんです」。
ものの例えのつもりだったが、それを“真に受けた”プロモーションチームから打診があったのは数週間後。「空に飛ばすのはさすがに難しかった。東京ゲームショウで着地した後の実物を見せませんか?」という提案を受けて、この企画が動き出した。
東京ゲームショウで一番目立つことをしたい
艇を作ることは決まったが、どのくらいの大きさでどう置くか?決めなければいけないことは山積みだった。急ピッチで企画を進め、今年2月には模型が完成、3月からは毎週定例会をして企画を詰めていった。
「『東京ゲームショウ』で画像検索をしたときに、一番目立つことをしようという気持ちは当初からありました」と春田さんは話す。
「東京ゲームショウでこんなすごいものを見た!」と写真をアップしてもらい、PRに結びつけたい。ゆえに、艇をどう見せるかも、「どう写真を撮ってもらいたいか」から逆算して考えていったという。
艇の3Dデータは既にゲーム用のものがあったので、それを元に原寸の8分の1サイズで具現化。その監修のため、毎週のように埼玉の制作現場にも通った。
東京ゲームショウが始まってからは、現場を訪れた人が投稿した「すげえ」の3文字が連日SNS上に躍った。
「まさに狙い通り。グランブルーファンタジーを知らない人も投稿してくれて、成功したという手応えがありました」。
ステージやシアターを含めたブース全体は、ゲームに登場する空を漂う「島」に見立てている。ステージやシアターは、「現場を訪れないと得られない限定体験」を提供する場だ。艇の写真を来場していない人にも広く話題を拡散する一方で、現場限定の体験も設けたかったという。
「シアター内のプロジェクション映像で見られるのは、今後のグランブルーファンタジーの先出しコンテンツです。島を訪れてくれた人に今後のコンテンツを見てもらうことで、これからもゲームを続けたいと思ってほしい。このゲームショウの体験を点で終わらせず、次につなげていきたいと考えました」。