【前回のコラム】「北陸に飛び込んだ、新米コピーライター。」はこちら
第2回目のコラムとなります。北陸・富山のコピーライター城川です。
まずは宣伝会議賞おつかれさまでした。今回は僕にとっては、プロとしてはじめての宣伝会議賞。1000本出す!と意気込んでいましたが、情けないことに800本で終わりました。すでに悔しいです。でも、この賞の醍醐味は「悔しさ」じゃないかと思っています。
締め切り直後から、もっと書けたと後悔して、審査通過者のリストを見ては、あの人こんなに!と悔しく、受賞作を見ては、弾丸のようなコピーに打ちのめされて悔しく。
誰に怒られるわけでもないのに、ガッツリ悔しがらせてくれる宣伝会議賞が好きです。でもこれで一次通過できなかったら恥ずかしいので、この話はやめにしましょう。
講座で学んだことは「ターゲットになりきるな」
コピーライターになりたい大学生だった僕は、当然のようにコピーライター養成講座に通いました。たくさんのすばらしい講義がありました。中でも印象的だったのは、児島令子さんの講義です。
「ターゲットになりきるな」
え?
講師の方々に、これまで何度も「ターゲットになりきれ」と言われてきたのはなんだったんだ!ひっくり返りそうになりましたが、これまでの講義を否定しているのではなく、真意はこうでした。
他人の気持ちは書けない。
ターゲットの気持ちをわからずに書くのは無責任。じぶんとターゲットの接点を見いだして、じぶんのわかる気持ちを、責任をもってつきつめなさい。
はっとしました。実感のないコピーは無責任で、そんなもの伝わるはずがない。胸に突き刺さる講義でした。
コピーライターって、自由だ。
コピーライター養成講座には卒業制作があります。僕たちの課題は、パナソニック「トリプルワイドIH」の雑誌広告でした。横並びの3口コンロが特長のIHキッチンです。しかも、1位は雑誌「ブレーン」に掲載です。
僕は3口のメリットを伝えようと、オムライスの写真に、
「オムレツとチキンライスをつくるうちに、デミグラスソースは冷めていたりします。」
というコピーの広告をつくりました。もちろん僕は課題のターゲットではありませんが、ひとり暮らしの小さなキッチンの前に立ちながら、実感を頼りに考えたコピーでした。結果として2位をいただくことができました。当時、お弁当男子でよかったです。
1位は、「金のえんぴつ」の覇者でもある、柘植朋紘さん。(講座では、課題の優秀作に「金のえんぴつ」が与えられます。)
柘植さんの卒業制作は、キッチンの一部を実寸大で雑誌に掲載してしまうというアイデアでした。
柘植さんは実際にショールームを見に行かれたそうで、そのときの実感をもとに、体験そのものをつくり出してしまいました。しかも紙の上で。言葉ばかりこねくり回していた僕は、そんなのありかよ!とまたひっくり返りそうに。
コピーライターの仕事は、ただ言葉を書くだけじゃない。もっと自由で、もっと遊べて、もっとぶち壊せるものだと気づかされました。ただ、この広告は表現方法が奇抜なだけでなく、ボディコピーひとつひとつがおもしろいのです。
同じ受講生の作ですが、僕にとっての広告のお手本であり目標です。講師の方々からも、受講生のみなさんからも、たくさんの刺激を受けた講座でした。
ダジャレが好きだったため、講座できちんと学ぶまで言葉遊びのコピーばかり書いており、さっそく「What to say」でつまづくようなダメ生徒でした。それでも受講生のみんなについていこうと、必死で勉強しました。そのころは運気がよかったようで「えんぴつ」もそれなりにもらえて、宣伝会議賞では本当にたまたまシルバーをいただいて、就職活動を目前に順風満帆でした。
夢の広告業界一直線です。次は、挫折です。
城川 雄大(しろかわ・ゆうだい)
アイアンオー株式会社 コピーライター
1990年生まれ。富山県富山市出身、在住。同志社大学社会学部メディア学科卒業。インテリア小売業を経て、2015年7月より現職。宣伝会議コピーライター養成講座大阪教室2011年春コース修了。第49回宣伝会議賞シルバー、第52回宣伝会議賞眞木準賞、北日本新聞広告賞特別賞など受賞。
「コピーライター養成講座」
講師は一流のコピーライターが直接指導 プロを育てる実践型カリキュラム
いまでも多くの有名クリエイターを輩出している本講座。幾度かの改変を経て、内容を一新。コピーやCMといった、広告クリエイティブだけでなく、インタラクティブ領域のコミュニケーション、マーケティングやメディアクリエイティブなど、さまざまな視点からコミュニケーションを構築する能力を養い、次世代のクリエイターを育てます。
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