NPOが信頼とファンを得る“共感メッセージ”のつくり方

ACTIONフレームワークにおいて考えてみよう

NPOは日々、社会的課題の解決のために活動をしています。でも「いい活動をしているのだけど、分かってもらえない」と嘆いている団体もあるのではないでしょうか。だからこそ伝える努力をするべきだと私は思います。伝わることで、その社会的課題を知ってもらえる人が増えるからです。ファンドレイジングは仲間づくりともいわれています。“仲間づくりなくしてファンドレイジングなし”なのです。

一人や一団体では社会的課題を解決するのは難しいのが現状です。枠を超えて協力し合う仕組みをつくるためにも、まずは団体のミッションやビジョン、活動内容に「共感する」「応援したくなる」メッセージ化をする作業を行う必要があります。

私はコミュニケーション戦略として「ACTIONフレームワーク」で思考の整理をしています。こちらを意識して「ことば」をつくってみてはいかがでしょうか。

A=Attention(注目)
つかみはOKですか?キャッチコピーや思わず振り向いてしまう写真など、相手が気にかける“何か”を仕掛けましょう。私は街を歩いていて気になったポスターのコピーや耳にして感動した言い回しをメモしています。そしてどうして気になったのかを考えます。

C=Change(変化)
自分の団体は、社会の何を変えようとしているのか、何を実現しようとしているのか伝えましょう。これに共感した人は、社会を変える仲間になってくれるはずです。

T=Trust(信頼)
どういった情報を見たら自団体を信頼してもらえるのかについて考える必要があります。事務局長が語る熱い夢に感動する人もいるでしょうし、企業のCSRの担当者や省庁は財務諸表などの数字や歴史に重きを置くかもしれません。ストーリーと一緒に数字も常に用意しておきましょう。

I=Imagination(想像)
物語が、イメージを湧かせやすくします。例えばタイのスラムに生まれ育ち、そこにあった図書館に通った女の子が、日本の東京大学にあたるチュラーロンコーン大学に入学しました。そして大学時代に外交官試験に合格し、世界で活躍する彼女は“スラムの天使”といわれています。Changeにも関係しますが成功体験や思わず伝えたくなる嬉しい話はストーリーとして書くことをお勧めします。

O=Only One(オンリーワン)
「自団体のオンリーワンのポイントは何ですか?」。そう聞くと「特徴なんかないです」と答えられることもしばしばあります。そんな時は「細かく分けて見てみる」「単位を変えてみる」ことをお伝えしています。神奈川県秦野市にある鶴巻温泉は「カルシウムの含有量が世界一」だそうです。たくさんある温泉の成分の中で、カルシウムに注目した例です。また世界や日本一ではないけど、都道府県や、もっと小さい単位だと市町村で一番と言えるものもあるかもしれません。

N=Network(ネットワーク)
「一人で頑張っている」よりも「つながりや広がり」をイメージできる方が応援したくなる傾向があります。人の気配がない公園に入っていくのは勇気がいりますが、人がおしゃべりをしていたり子どもが遊んでいると何の不安も感じずに公園を横切るでしょう。SNSは公園だと思っています。みんなが楽しそうにしているコミュニティはのぞいてみたい、安心・安全だと認識したらコメントを書くなど参加してみたいと人は考えます。

白い紙を用意して、ゼロから言葉をつくるのは大変です。このACTIONフレームワークにしたがって、言葉をつくってみてはいかがでしょうか。Aから始める必要はなく、自分のやりやすいところから手をつけてみてください。

さて私が担当する第6回は、SNS活用を通したファンドレイジングについてお伝えします。

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マーケティング コミュニケーション実践論
マーケティング コミュニケーション実践論

■井出留美
office 3.11 代表取締役
青年海外協力隊時代に手書きで配信した「パル通信」、1305号配信した「広報室ニュースレター」など情報発信力が強み。NPOを様々な賞へ導いた実績や企業・NPOの広報室長などの経験を持つ。わかりやすい講演が好評、全国からの依頼は330回。外資系企業管理職から震災を機に退職、起業。メディア出演170回。博士(栄養学)。東京大学農学系(農学部・農学生命科学研究科)広報室会議オブザーバー。


■長浜洋二
PubliCo 代表取締役CEO
かわさき市民しきん評議員/シャンティ国際ボランティア会戦略アドバイザー/NPO法人CRファクトリー コミュニティ・マネジメント・ラボフェロー
1969年山口県生まれ。米国ピッツバーグ大学公共政策大学院(公共経営学修士号)卒。NTT、マツダ、富士通でマーケティング業務に携わる一方、米国の非営利シンクタンクにて個人情報保護に関する法制度の調査・研究、ファンドレイジング、ロビイングなどの経験を持つ。著書に『NPOのためのマーケティング講座』。

■鎌倉幸子
(シャンティ国際ボランティア会 広報課長補佐/認定ファンドレイザー)
青森県弘前市生まれ。アメリカ・ヴァーモント州にあるSchool for International Trainingで異文化経営学の修士号を取得。1999年、シャンティ国際ボランティア会にカンボジア事務所図書館事業課コーディネーターとして現地赴任。2011年に同団体の広報課に異動。広報の仕事と兼務しながら東日本大震災後、岩手県での移動図書館プロジェクトの立ち上げを行なう。著書に『走れ!移動図書館』(ちくまプリマー新書)。

マーケティング コミュニケーション実践論

■井出留美
office 3.11 代表取締役
青年海外協力隊時代に手書きで配信した「パル通信」、1305号配信した「広報室ニュースレター」など情報発信力が強み。NPOを様々な賞へ導いた実績や企業・NPOの広報室長などの経験を持つ。わかりやすい講演が好評、全国からの依頼は330回。外資系企業管理職から震災を機に退職、起業。メディア出演170回。博士(栄養学)。東京大学農学系(農学部・農学生命科学研究科)広報室会議オブザーバー。


■長浜洋二
PubliCo 代表取締役CEO
かわさき市民しきん評議員/シャンティ国際ボランティア会戦略アドバイザー/NPO法人CRファクトリー コミュニティ・マネジメント・ラボフェロー
1969年山口県生まれ。米国ピッツバーグ大学公共政策大学院(公共経営学修士号)卒。NTT、マツダ、富士通でマーケティング業務に携わる一方、米国の非営利シンクタンクにて個人情報保護に関する法制度の調査・研究、ファンドレイジング、ロビイングなどの経験を持つ。著書に『NPOのためのマーケティング講座』。

■鎌倉幸子
(シャンティ国際ボランティア会 広報課長補佐/認定ファンドレイザー)
青森県弘前市生まれ。アメリカ・ヴァーモント州にあるSchool for International Trainingで異文化経営学の修士号を取得。1999年、シャンティ国際ボランティア会にカンボジア事務所図書館事業課コーディネーターとして現地赴任。2011年に同団体の広報課に異動。広報の仕事と兼務しながら東日本大震災後、岩手県での移動図書館プロジェクトの立ち上げを行なう。著書に『走れ!移動図書館』(ちくまプリマー新書)。

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