ここでは、『販促会議』2015年12月号に掲載された連載「販促NOW-アプリ編」の全文を転載します。
航空会社ほど、ネットが登場しスマホによってビジネスモデルが変化した業界もないだろう。一昔前は、航空券を買うにも旅行代理店やカウンターに行く必要があった。いまではネットがあれば、各航空会社の空席状況を確認しながらチケットが買える。購入した航空券はケータイやスマホの画面にバーコードを表示することで、そのまま飛行機に乗れてしまう。航空会社にとって、ネットの世界でいかに先進的なことをして、顧客のハートを奪うかが生き残りのカギとなっている雰囲気もあるほどだ。
先ごろ、ANAのスマホアプリが、iBeaconに対応するようになった。これにより、空港に到着したら、スマホアプリを見るだけで、いま自分がどこに居るかがわかり、搭乗ゲートに近い保安検査場まで誘導してくれるという。現在、対応する空港は羽田空港第2ターミナルのみだが、羽田空港は保安検査場がいくつもあり、どこから入ろうか迷ってしまう。実際、試してみたが、空港に着き、施設に入るとすぐに通知画面が出てきたのには驚いた。
自分はANAによく搭乗し、アプリも頻繁に使っている。先日、飛行機のフライトが遅延した際も、空港内の電光掲示板に負けないタイミングで、Apple Watchで知らせを受け取れた。空港でお土産を買っていたり、ラウンジで仕事をしている際もすぐに気がつけるので便利なのだ。また、ANA のアプリには位置情報を測位し、空港に居た場合には、その空港の絵柄などが入った画像をフェイスブックにスタンプのように貼り付けられるサービスがある。個人的には、気に入って使っていて、スタンプをフェイスブックに押す度に「また、出張ですか」と友だちに書き込まれるのが楽しかったりもした。
最近は、空港に行ってもスタンプを押す機会が減ってしまったというか、スタンプの存在を忘れがちであった。
ANAとしては、アプリに今回のようなiBeacon連携機能を搭載することにより、空港についたらアプリを起動するという習慣を改めて植え付けたいのだろう。
ANAのような航空会社で、スマホ向けに予約やチケット販売を受け付けていても、やはりアプリを継続的に使ってもらうには、いろいろと努力が必要なのかもしれない。ユーザーへの利便性を高めつつ、満足度を上げるには一度、アプリをつくっておしまいというわけではなさそうだ。今回、羽田空港での案内という機能を搭載しているが、できれば、地方だけでなく海外の空港でも対応してくれるとありがたい。特に海外の空港はANAのカウンターを見つけづらいこともある。各空港にお願いして、iBeacon をつけてもらい、対応できることを期待したい。
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石川 温氏(いしかわ・つつむ)
ケータイ・スマートフォンジャーナリスト。1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。
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