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広報活動とは、「社会性」「ヨソにない特徴」「ストーリー性」をアピールしていくことであり、それが顧客志向になり、イノベーション(技術革新)やマーケティングにつながっていく。中小企業が広報を強化することは即ち、経営を高度化することなのである。「うちなんて、メディアに載るような会社じゃないし……」などと言わずに、広報にチャレンジしてほしい。今回は、多くの中小企業に勇気を与える事例を紹介したい。
3紙が報じた「ご当地化粧品」
茨城県の水戸市、ひたちなか市でゴルフ練習場を運営するウィルトラスト(礒崎博文社長)は、イル・ヴリール(東京都新宿区、加藤和則社長)とともに、茨城県の農産品であるブドウ、栗、ニラネギ、柿のエキスを配合したご当地化粧品「アプローチシャイン」を共同開発、2015年7月中旬に発売した。
女性ゴルファーの日焼けケアによるゴルフ場来場者増と農業振興による地域活性化を狙い、肌の老化を防ぐ抗糖化化粧品を開発しているイル・ヴリールに提案し商品化したものだ。約2カ月使用できる洗顔石鹸(100グラム)、フェイシャルパック(10グラム入り8個)のセットで、価格は税込3780円。
茨城にあるアコーディア系列のゴルフ場や、東京・銀座にある茨城のアンテナショップ「茨城マルシェ」などで販売しており、初年度2400セット、3年後に年間5000セットの販売を見込んでいる。本件は茨城新聞が7月31日付、日刊工業新聞が8月12日付、フジサンケイビジネスアイが9月3日付で、いずれも大きく取り扱い、話題を投げかけた。
なぜメディアは、この記事を掲載したのか。それは前述の「社会性」「ヨソにない特徴」「ストーリー性」が織り込まれていたからである。
ゴルフ人口はプレイヤーの高齢化によって減少しており、女性プレイヤーの拡大が大きな課題となっている。茨城県のゴルフ場数は全国第5位、来場客数は全国第2位と“ゴルフ県”なだけに、なおさらだ。さらに、茨城県の“魅力度”も低い。ブランド総合研究所の「地域ブランド調査2014」では、全国で最下位に沈んでいる。
「地域を活性化しないと、本業のゴルフ練習場も危うくなる」。そう考えた礒崎社長は、茨城県の豊富な農産品に目を付けた。茨城県の農業生産量は全国第2位で、メロン栗、白菜は出荷量が全国第1位。ブドウ、栗、ニラネギ、柿などはいずれもポリフェノールを含有しており、抗酸化・抗糖化作用とあいまって皮膚を健康に保ち、肌に潤いとハリを与える。「茨城県の農産品を生かした高品質の日焼けケア化粧品を開発して、女性ゴルファーにアプローチし、茨城県の魅力度もアップしよう」という方針が決まり、イル・ヴリールとの共同開発に着手した。
どのように発表するかも重要
メディアへのアプローチについては、地域活性化ネタであることから茨城県庁の中にある茨城県政記者クラブへの資料配布という手段を選んだ。電話番号を調べ、飛び込みで幹事社に話を聞いてもらった。まず茨城新聞が関心を示し、それが複数紙の掲載に結びついた。大手の新聞社、通信社は全国に取材拠点を置き、地域ネタを追っているので、地元で発表したほうが記事になりやすいのである。
いかがだろうか。全く記事になりそうにないゴルフ練習場運営会社でも、広報にチャレンジし、経営を変革すれば、メディアに大きく掲載される。次は、あなたの会社かもしれない。
管野 吉信(かんの・よしのぶ)
広報コンサルタント
広報ブレーン 代表取締役
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員等を務める。その後、東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)に広報室長として移るも、複数の不祥事が発覚し、執行役員として後始末に奔走。2012年に株式会社広報ブレーンを設立。
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