オンライン動画の活用が消費者とのコミュニケーション手段として欠かせなくなっている中で、各社の事例を中心に、オンライン動画の最新動向をレポートしています。
ここでは特集内の記事の一部を転載。近年動画が注目される理由について、3つの側面から探る。
「動画マーケティング」という言葉が巷間で流通するようになってから、ずいぶんと経ちます。まず、大前提として、そういった状況のなかで、「◯◯マーケティング」という括りで動画を考えようとすると、物事の本質を見誤るように思います。とはいえ、マーケティング活動において、“動画”の果たす役割が大きくなっていることもまた事実。ここでは動画が注目される理由を、3つの視点から考えていきましょう。
REASON 1 映像技術のデジタル化(技術的要因)
動画が注目される理由として、まず制作/編集/配信の低コスト化が挙げられます。映像制作のデジタル化は、1997年頃から本格化して、すでにデジタル化を済ませたデザイン(DTP)と合流しながら発展してきました。その結果、それまで明確にあった映像機材における「プロユース」と「民生品」の垣根がなくなり、映像制作に対しての参入障壁が劇的に下がりました。
インターネットの本格的な普及が始まると、主にバナー広告配信やリスティング広告などの広告技術的なアプローチでの基盤も整備されていきました。データ量の多い動画についても、データを効率的に圧縮するコーデック技術の開発が進みます。さらに光ファイバー網の普及といった要素も絡みながら、広告配信の仕組みの動画応用も盛んになっていきました。こうして、
- デジタルカメラで映像を撮影し、コンピュータで編集するという「映像制作技術」
- 高 速なネットワークでネット経由で動画を見るという「ネットワーク基盤技術」
- それを広告として配信するという「広告配信技術」
これら3つの要素が揃い、現在に至ってようやく「広告としての動画配信」という技術的環境が整うことになりました。
REASON 2 私たちの視聴体験の変化(心理的要因)
技術的背景に加えて、マーケティングにおける動画の役割が重要視される理由には、視聴体験の変化にも注目する必要があります。
メディアに接するときの“体験”は、デバイスの普及によって変化してきました。「固定電話」から「携帯電話」への変化。あるいは、「電話」から「メール」への変化。昨今の動画に対しての注目が集まっているのは、「スマートフォン」の普及が大きな要因として挙げられます。
重要なことは「スマートフォンが普及したから、動画が注目される」のではなく「スマートフォンによって、動画視聴のあり方が変わった」という点です。実際問題として、スマートフォンに慣れるまで、映像制作に携わっている私たちは、「あんな小さな画面で映像なんて見ないよ」と感じていました。ところが、ここ最近では私自身もスマートフォンで映像を見ることが苦痛でなくなってきています。
これは、現在の若い世代の人たちがスマートフォン入力でも長文を書けることと似たようなこと、と説明するとわかりやすいでしょうか。筆者は練習のために、毎日スマートフォンで長文を書く練習をした時期があるのですが、いまではストレスなく書けるようになりました。実際に練習を行ってみてわかったことは、入力のスキルというより、「キーボードの方がラク」という思い込みや感覚の方が大きかった、ということです。むしろ、その感覚そのものがスマートフォンでの入力を避けていたことを痛感しました。
動画視聴に関しても同様で、“小さな画面で映像を見る”という感覚が、多くの人の身についてきたということが大きな要因として挙げられます。