支援者の獲得につなげるコンテンツマーケティングの極意

コンテンツマーケティングの3つのポイント

NPOをはじめとするソーシャルセクターでコンテンツマーケティングを実践していくにあたり、留意すべきポイントが3つあります。

1つ目が、コンテンツマーケティングは、中長期的な視点での顧客との関係性づくりとはいえ、あくまでも最終的なゴールとゴール達成に向けたKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を明確にしなければならないということです。前出の支援者ピラミッドの事例では、最終的なゴールは寄付者の獲得です。このゴールを事前に明確にしておかないと、ただ単に情報を発信し続けることになり、担当スタッフの間に疲弊感や徒労感が蓄積されてしまいます。大事なのは、最終的なゴールを定めた上で、その成果に辿り着くためのHPの訪問(数)、資料請求(数)、メールマガジン登録(数)、イベント申し込み(数)など、小さな階段(KPI)を用意しておくことです。NPOが期待しているようには潜在的な顧客はいきなり最終ゴールに辿り着いてくれるわけではありません。

2つ目が、ペルソナの設計です。ペルソナとは、あたかも実在するかのような人物像のことですが、コンテンツマーケティングの実践には情報提供の対象となるペルソナの設定が欠かせません。自団体のターゲットとする潜在顧客の人物像を見極め、どのような文脈で団体HPを訪問したのか、どのような情報を求めているのか、どこで情報を収集しているのか、どのような意志決定プロセスを経て最終的に支援者となっているのかなど、HPのアクセス解析と実際の対面でのヒアリング調査を行うことで潜在顧客に関する洞察を深め、具体的なペルソナを設計していきます。

最後が、コンテンツマーケティングをリアルな世界でも実践していくという点です。コンテンツマーケティングというと、昨今ではインターネットに特化した仕組みや仕掛けとみられがちですが、リアルな世界でも応用することができます。当事者意識を持ってもらいにくいNPOの活動だからこそ、いきなり支援を求めるのではなく、少しずつ興味関心を醸成しなければなりません。例えば、国際協力分野のNPOが、事業を行っている途上国の食べ物を振舞うパーティーを行いながら、その国のおかれた状況や歴史・文化、人びとの生活の様子について知ってもらうというものがあげられるでしょう。

NPOなどのソーシャルセクターに携わっている人は、寄付者や会員、ボランティアなど、特に支援者の獲得というゴールを意識すればするほど、そこに至る道のりが遠く、険しいことを日々実感しているはずです。だからこそ一歩ずつそのゴールに向けてステップアップしてもらう仕組みを作る必要があり、コンテンツマーケティングはそれに応える考え方であり、実務なのです。

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マーケティング コミュニケーション実践論
マーケティング コミュニケーション実践論

■井出留美
office 3.11 代表取締役
青年海外協力隊時代に手書きで配信した「パル通信」、1305号配信した「広報室ニュースレター」など情報発信力が強み。NPOを様々な賞へ導いた実績や企業・NPOの広報室長などの経験を持つ。わかりやすい講演が好評、全国からの依頼は330回。外資系企業管理職から震災を機に退職、起業。メディア出演170回。博士(栄養学)。東京大学農学系(農学部・農学生命科学研究科)広報室会議オブザーバー。


■長浜洋二
PubliCo 代表取締役CEO
かわさき市民しきん評議員/シャンティ国際ボランティア会戦略アドバイザー/NPO法人CRファクトリー コミュニティ・マネジメント・ラボフェロー
1969年山口県生まれ。米国ピッツバーグ大学公共政策大学院(公共経営学修士号)卒。NTT、マツダ、富士通でマーケティング業務に携わる一方、米国の非営利シンクタンクにて個人情報保護に関する法制度の調査・研究、ファンドレイジング、ロビイングなどの経験を持つ。著書に『NPOのためのマーケティング講座』。

■鎌倉幸子
(シャンティ国際ボランティア会 広報課長補佐/認定ファンドレイザー)
青森県弘前市生まれ。アメリカ・ヴァーモント州にあるSchool for International Trainingで異文化経営学の修士号を取得。1999年、シャンティ国際ボランティア会にカンボジア事務所図書館事業課コーディネーターとして現地赴任。2011年に同団体の広報課に異動。広報の仕事と兼務しながら東日本大震災後、岩手県での移動図書館プロジェクトの立ち上げを行なう。著書に『走れ!移動図書館』(ちくまプリマー新書)。

マーケティング コミュニケーション実践論

■井出留美
office 3.11 代表取締役
青年海外協力隊時代に手書きで配信した「パル通信」、1305号配信した「広報室ニュースレター」など情報発信力が強み。NPOを様々な賞へ導いた実績や企業・NPOの広報室長などの経験を持つ。わかりやすい講演が好評、全国からの依頼は330回。外資系企業管理職から震災を機に退職、起業。メディア出演170回。博士(栄養学)。東京大学農学系(農学部・農学生命科学研究科)広報室会議オブザーバー。


■長浜洋二
PubliCo 代表取締役CEO
かわさき市民しきん評議員/シャンティ国際ボランティア会戦略アドバイザー/NPO法人CRファクトリー コミュニティ・マネジメント・ラボフェロー
1969年山口県生まれ。米国ピッツバーグ大学公共政策大学院(公共経営学修士号)卒。NTT、マツダ、富士通でマーケティング業務に携わる一方、米国の非営利シンクタンクにて個人情報保護に関する法制度の調査・研究、ファンドレイジング、ロビイングなどの経験を持つ。著書に『NPOのためのマーケティング講座』。

■鎌倉幸子
(シャンティ国際ボランティア会 広報課長補佐/認定ファンドレイザー)
青森県弘前市生まれ。アメリカ・ヴァーモント州にあるSchool for International Trainingで異文化経営学の修士号を取得。1999年、シャンティ国際ボランティア会にカンボジア事務所図書館事業課コーディネーターとして現地赴任。2011年に同団体の広報課に異動。広報の仕事と兼務しながら東日本大震災後、岩手県での移動図書館プロジェクトの立ち上げを行なう。著書に『走れ!移動図書館』(ちくまプリマー新書)。

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