1922年創業の生地加工工場が、自社ブランドを持つメーカーになるまで

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第5号(2015年11月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

 

老舗企業でもベンチャーでも、いま成長している企業に共通する特徴–それは、「マーケティング」という言葉を使わずとも、顧客視点に立った価値をつくり、イノベーションを起こすことに成功しているということです。新しい市場をつくった8人の「マーケター」の取り組みや考え方に迫ります。

染色加工の下請け工場から自社ブランド立ち上げへ

「商品力」「デザイン」「価格」の3つの要素のトータルでの質の高さがブランドの強み。

現社長の増田和久氏の祖父が1922年に創業したマルジュー。名古屋の庄内川のほとりで、晒(さらし)工場としてスタートした。「晒」とは、綿や麻などの生地を川の水で晒して洗ってから乾燥させ、生地を白くすること。加工した生地は、手ぬぐいや肌着などの素材として使用された。

工場は時代とともに発展し、晒・染色技術に加え、生地の抗菌加工、防ダニ加工の独自技術も取り入れたことで、1990年代前半までは加工賃だけで安定した業績を保っていた。ところが和久氏が家業に携わるようになった1990年半ば、今から約20年前に大きな危機が訪れる。中国をはじめ海外から安価な製品が大量に日本に輸入されるようになり、生地の加工の受注数が激減したのだ。

日本の繊維業界は、川上から川中、川下まで完全な分業体制がとられている。川上といわれるのが繊維原料の調達や糸の製造・加工分野で、東レや帝人など大手間では製品別の棲み分けがされている。川中は織物・編み物生地の加工・染色分野。川中企業の多くが中小あるいは零細企業だ。川下は、アパレル・流通小売となる。

しかし繊維業界では、プレイヤー同士のつながりがないのだという。「例えば当社は、以前から布団カバーの生地を加工していましたが、それを縫製して製品化する工場・企業とは直接の取引がなかった。加工する元の素材も商社・問屋から仕入れていましたから、織工場とのつながりもありません。既存のビジネスモデルの枠組みの中では、自社だけで立つことができない上に、生産拠点が海外に移るなか、仕事は減るばかり。そこで、これまで商社に任せていた、製品づくりの旗振り役を自分たちが担い、関連企業・工場との連携を含め、自分たちの仕事を生み出そうとものづくりにも取り組むようになりました。このままでは、将来立ち行かなくなると考えての、業態変革でした」(増田氏)。

そのはじめの大きな一歩が、12年前のEC事業への進出(=楽天市場への出店)だ。これまで培ってきた生地加工の技術を生かし、寝具カテゴリーから自社製品の販売をスタートした。ECサイトのショップ名を兼ねたブランド名は「ファブリックプラス」。「ファブリック(布)」に形や用途を「プラス」することで、繊維産業の可能性をより広げたいという願いを込めた。1年目で月商の目標金額を達成。年々商品カテゴリーも増やし、販売額も伸ばしてきたが、今から3~4年前に、ECだけの販売に限界を感じたと増田氏は語る。

クリエイターとタッグを組み
小売店で売れる商品をつくる

「当社の商品は、まだブランディングができておらず、ネットでは売れても、小売店で扱われるレベルとは到底言えませんでした。さらに、当社にとって自社工場を維持することは至上命題ですから、他メーカーから商品を仕入れないため、アイテム数も限られます。楽天市場内での競争が激化する中、このままでは勝ち残れないと思いました。そこで、リアルな店舗に販路を広げる必要があり、小売店で売れるようなブランディングやパッケージデザインに取り組む必要に迫られたのです」と増田社長。

そうして誕生したブランドが「めんぷ〼田」。特徴は、質の良い天然素材を用いており、しっとり滑らかで肌にやさしいこと。「めんぷ」というネーミングは、マルジューが長年加工し続けてきた「綿布」から着想を得た。商品ラインアップは綿布の中でも特にガーゼに特化。「ファブリックプラス」でガーゼ製品の売上や評判が高かったことと、また産後間もないママ層に大きなニーズがあると考えたためだ。

「続きは100万社第5号本誌をご覧ください」

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増田 和久
マルジュー 代表取締役

1967年生まれ。26歳で家業である増田晒工場(当時)に入社。36歳で同社3代目社長に就任。繊維の染色・加工会社から、最終製品まで手がけるメーカーへと、大胆な業態転換を行った。


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