株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
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関 文彦
関家具 代表取締役
福岡大学卒業との1968年、関文彦社長が家具卸として創業し、1982年に法人化した。現在、東京、仙台、大阪、福岡、中国・大連に営業拠点を持つ。2014年5月期の売上高は133億円。
若手社員のアイデア重視
時流に合う商品を開発する
福岡県大川市は高級婚礼家具などで栄えた日本一の家具生産地である。だが近年は、生活様式の変化や海外製品との価格競争などに打撃を受け、産業の規模は縮小の道をたどっている。
その大川市で、1968年の創業から現在までの47年間、1期も赤字を出したことがない企業がある。関文彦社長が率いる、家具やインテリア、住関連商品の企画・販売を行う関家具だ。2014年5月期の売上高は133億円。関氏が一人で始めた小さな家具問屋は、今では400人近い社員を抱えるまでになった。
関家具のテーマは「時流に合った商品の開発」だ。関氏は「時流に合う商品を開発することができるかどうかは、若い社員が楽しく仕事ができているかどうかにかかっている」と言う。20代、30代の若い世代の社員のほうが、最先端のものには敏感だからだ。「若い社員に、自分がやりたいと思うことや、楽しいと思う仕事をさせることが、結果的に時流に合う商品を開発し続けることにつながる」と関氏は考え、それを実行している。
同社はドイツマットレスブランド「センベラ/シェララフィア」やイタリアの高級ソファー「フェデリコⅡ」、高級オフィスチェア「エルゴヒューマン」などの海外ブランドを取り扱う。こうしたメーカーを開拓してきたのもすべて現場の社員だ。
さらに、近年は自社ブランドの開発にも力を入れる。自社の若手デザイナーと商品企画開発チームが手がけた「CRUSHCRACH PROJECT(クラッシュ クラッシュ プロジェクト)」は古材を利用したヴィンテージ家具ブランド。自由が丘や吉祥寺、名古屋、大阪EXPOCITY など、関家具の主力ブランドとして大都市圏にショップを展開している。古材独特の空気感や温もり、質感を大切にしている同ブランドは、「knotantiques」「tabu」「DISTRICT EIGHT(D8)」「EASY LIFE」といったいくつかのシリーズで構成される。北欧のヴィンテージ家具にはない、現代のオーディオやテレビに対応した家具や、日本らしさを大切にしたデザインの家具などを用意していることに、日本一の家具生産地で長年にわたって家具ビジネスに携わってきた、関家具のこだわりや誇りが感じられる。
同社が初めて自社製造したブランドが、「ATELIER MOKUBA(アトリエ 木馬)」だ。操業停止となった大川の婚礼家具セットメーカーの工場を買い取ることになった時に、社員のアイデアで一枚板の高級テーブルを生産することに決めた。ブランドの創業から4年、アトリエ木馬は美しい木目が特徴の1点ものの高級テーブルブランドとして人気を博しており、中国、韓国、シンガポールやドバイにまで販路を広げている。
関家具が取り扱うすべての商品に共通していることは、「社員が発案した」ということだ。関氏の信条に「社長にとって社員は最も有能な先生である。社員との会話はアイデアの源泉」という考え方がある。この言葉は「関家具経営の心得13カ条」に示されている。この信条に則って、関氏は現代の人々のライフスタイルや、暮らしに求めるものといった“時流”を社員という先生から学んでいる。
一方、社員からビジネスプランの提案があれば、関氏は採用の可否をその場で即決する。「決断は直感的にしていますが、決してヤマ勘ではありません」と関氏。毎年欠かさず、ロンドン、ミラノ、パリ、ニューヨーク、ケルンの5都市を視察して、世界最先端の家具ビジネスのトレンドをチェックしている。社員の提案の採用可否は、そうして蓄積した知見をもとに判断しているのだ。「社長は社員の10倍は勉強しなければいけません。そうでなければ、スピーディーな決断はできません」(関氏)。
もう一つ、若い社員が自由な発想で仕事をするために社長がしなければならない重要な役割は、社員が新しいことにチャレンジできる環境づくりだという。関氏は常々、「失敗しても一切文句は言わない。全責任は社長がとる」と社員に公言している。だから社員は思い切って自分がやりたいことに取り組むことができるのだ。そうした社風が関家具を活性化して、大きな力となっている。
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