【前編】「箭内道彦×並河進「『社会のために」は、ブームじゃないぜ!社会×仕事×自分の関係の結びかた』(前編)」はこちら
紅白歌合戦は福島の今を伝える“最強のCM枠”だった
並河:箭内さんが震災の後、スイッチが入った瞬間はいつだったんですか?
箭内:一番は、福島中央テレビから県民の方々へのビデオコメントを求められた時かな。「今だけじゃなく自分はずーっと(支援活動を)やります、約束します」と言ったんです。それまでは、ロックに生きたい、明日死んでも構わないと思ってた。でもその時、この約束は長生きしないと全然意味がないんだと気づいて。それまで約束するのなんて、大嫌いだったんですけど。
並河:それもロックなんですね。
箭内:元々どこもロックじゃないんですよ。ロックな人は、自分でロックって言わないの(笑)。
並河:「I love you & I need you ふくしま」では、2011年の紅白歌合戦に初出場されましたよね。
箭内:紅白歌合戦に出たかったんです、ものすごく。一番全国の注目を集める場で、広告会社にお願いしても絶対に買えない強烈なCM枠だと思っていたので。福島の今を絶対に伝えようという使命感で臨みました。台本を見たら、嵐のメンバーと話す場面があったんですよ。「ここだ!」と思って。台本にはあらかじめセリフが全部書いてあるんだけど、違うことを言おうと。文字数が合うように、ギリギリ怒られないように考えてね。「悔しい」と言おうと決めたんだけど、実際にその言葉を言った瞬間に、大みそかで盛り上がっていた日本中がシーンとするのを感じました。カメラを通じて、それって感じられるものなんですよ。
並河:僕も現場にいたのですが、猪苗代湖ズの演奏のあとは、裾で見ていたスタッフも記者も全員が拍手していました。箭内さんは福島を勝手に広告すると言っているけれど、紅白の場で話すこと自体が、箭内さんにとっては広告だったんですね。