子どもと遊ぶのは楽しくもあるが、大人にとっては時にたいへんで退屈なもの――通販大手のフェリシモが、そんな日常のちょっとした課題を解決するために、いっぷう変わったつみ木「KUUM(クーム)」を発売した。担当したのは、子育て中の女性プランナー2人だ。
円弧やかぎ型など、ユニークなピースが特徴。毎月10~26個のピースのセットをひとつずつ、12カ月間発送する。1セット4050円(税込み)で、1万セットの販売を目指す。就学前の児童の集まる施設に置いたり、ワークショップで試遊できる機会を設ける計画も。
「KUUM(クーム)」のコンセプト設計とデザインは、米国のデザインファームmonogoto(モノゴト)が携わった。同社の濱口秀司CEOはUSBメモリの発案者として知られ、一昨年の秋ごろにフェリシモで講演した経緯から、共同開発に至った。
想像力を引き出す「汎用さと特殊さのバランス」
子どもも大人も一緒になって楽しめるよう、うまく想像力・創造力を引き出すデザインが求められた。デザインのキーワードとなったのは、「『汎用さと特殊さのバランス』だった」と、「KUUM(クーム)」に携わったmonogotoの宇野万里恵氏は話す。
「もし、つみ木のピースの数や形が無限にあれば、作れるものも無限になるのですが、人は『なんでも作れる』という環境では、アタマも手も止まってしまう。例えば『俳句』のようにある程度『制限』があったほうが、人は創造性を発揮しやすいものです。
レゴブロックのように『どう使ってもいい』と感じさせる、汎用的な部品にも同じことが言えます。『どう使ってもいいもの』は、『こう使いたい』という想像や創造のきっかけとなりにくい。これは、ブロック一つひとつに特別な性質や意味性がないためでしょう。
かと言って、あまり具体的に花や星の形にしてしまうと、それはそれでイマジネーションの余地、組み上がる作品の種類が少なくなってしまいます。『KUUM』をデザインする際に課題となったのは、こうした『汎用さと特殊さのバランス』でした」。
デザインを経てたどり着いたのは、合計202個のピースに、12の構造・36パターンの形状だった。ピースそれぞれに想像・創造のきっかけになるようなユニークな形と色を割り当てながら、角度や長さの計算を重ね、汎用的な部品として何通りにも機能するよう設計。
12の構造にはそれぞれ、『うみ(海)』や『き(木)』といった象徴的なテーマを設けた。「一つひとつが、世界をかたちづくる要素の一部である、という全体的な世界観を表現するため」(宇野氏)という。
ターゲットは、勉強に加え、感性や論理的思考を伸ばすことに関心のある親とその祖父母。フェリシモは、「いわゆる賢さだけではなく、感じ取る力や自分で答えにたどりつく力などを育てたいと考える親は多い」と需要を見込む。
広くアートに対して関心を持つ大人にも手にとってほしいという。「すでに数万セット販売した当社の500色の鉛筆を、使わずに飾っている方も少なくない。『KUUM』もインテリアとして楽しんでいただければ」(同)