カオス化する消費者行動が「オムニチャネル」を生んだ<デジタル・シフトVol.3>

チャネルの再定義とオムニチャネルエクスペリエンス

パーチェスファネル内部のカオス化とは、認知~関心・検討~購買~購買後の利用までの一連のプロセスにおいて、デジタル/非デジタルの選択肢が常にあり、情報収集行動、さらには購買行動がいつなんどき起こるかわからないということです。

こうした行動に対応するのがオムニチャネルの考え方です。「オムニ」とは「全て」という意味ですが、むしろ「シームレス」と捉えるとわかりやすいでしょう。オムニチャネルの考え方は2011年くらいから、米国の小売業を中心に注目を集めてきた概念です。米国小売業協会(NRF)が発表したMobile Blueprintの資料“Evolution Of Customer-Retailer Touch Points”にも、この言葉を見つけることができます。

ちなみにオムニチャネルに至るまでには、単一チャネル⇒複数チャネル⇒クロス(複数横断)チャネルという進化がありました。クロスチャネルとオムニチャネルの違いは、クロスチャネルはどちらかというと企業視点でチャネルがクロスすることを意味しています。例えば「ネットで申し込みをしたが、郵送や電話確認が必要」「一つの購買プロセスの中においてチャネルが交わる場合、ネットで購入したが、受け取りは店舗」など特定のチャネル間でのシームレス化にとどまる概念と言えます。

一方でオムニチャネルは顧客の意思に応えることがコンセプトであり、企業側の意思とは無関係に、顧客の意思(時に無意識・気まぐれ)によってどのチャネルにどの購買プロセス中で接点が発生するか分からない購買スタイルに対応しようというものです。

そして、その実践において求められるのが顧客一人ひとりのニーズを充たすオムニチャネルエクスペリエンスの提供。これも、また第2回のコラムで触れた「個客理解」やパーソナライゼーションの考え方へとつながっていきます。

次回コラムでは、3つ目の軸「テクノロジー」について解説をします。


【次回】
「テクノロジー中心主義」を「顧客中心主義」につなげられるか<デジタル・シフトVol.4>こちら


田島 学 氏(たじま・まなぶ)
アンダーワークス 代表取締役社長

早稲田大学政治経済学部卒。南カリフォルニア大学留学。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)にて大手企業Web CRM戦略立案、Webを利用したロジスティックス改善プロジェクト、ダイレクトチャネル戦略立案等に従事。セキュリティ認証事業ベンチャーの立ち上げを経て、アクセンチュアとソフトバンクのジョイントベンチャーであるイーエントリーにて、海外IT企業の日本市場進出コンサルティングを行う。2004年よりコンサルタントとして独立、多くのWebサイト調査分析/戦略立案/構築プロジェクトに参画。2006年4月、アンダーワークスを創業。

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