日常と継続性を象徴する「お弁当」に着目
「ゼロ動」で人気度トップとなったのは、1-10HOLDINGSの富永省吾さん、綿野賢さん制作の「HANDMADE HOMETOWN」。東京で暮らす6人の若者に、テーブルの上に並ぶ6つのお弁当を食べてもらい、自分の実家から届いたお弁当を当ててもらうという内容だ。
今回のテーマである西友の「プライスロック」は、最低6カ月の間、対象商品となる生活必需品を一切値上げせずに低価格で提供し続ける施策。親会社ウォルマートの「EDLP(Everyday Low Price)」の戦略の一つとして実施されている。「HANDMADE HOMETOWN」は、このEDLPを「生活者の日常を継続的に支える西友の意志」と解釈し、親の作る「お弁当」を継続性の象徴として登場させるものだ。
この企画について、富永さんは「気を配ったのは、ブランドと話題性のバランスです。人気度を競うということを意識しつつも、完全にバイラルに振り切らずに、西友のブランドムービーとして機能するようにするよう考えました」と話す。
西友といえば、エンタメ路線の広告表現で知られているが、その文脈も意識した。エンタメ系のパーソナリティを持ったブランドがふと見せる違った表情で、「これが西友のCM?」とギャップを印象に残そうと考えたという。
“親の作るお弁当”というモチーフは、「スーパー」と「日常性」を掛け合わせた領域でしか成り立たない(コンビニ×日常性でも、レストラン×日常性でも成り立たない)という理由で選んでいる。さらに、“お弁当当てクイズ”のドキュメンタリー形式にすることで、「お弁当の持つ副次的な価値」(子どもにとって心のふるさとになる)を明らかにする狙いだった。
演出の誘惑に負けない コンセプトをブレさせない
お弁当は、出演者たちの母親に実際に作ってもらったものを使っている。意外と苦労したのはお弁当箱探しで、ニュートラルな印象のアルミの弁当箱をスタッフ3人がかりで丸一日、都内を探し回ったという。
撮影・編集で気をつけたことは、「心温まるムービーにしないこと」。「手料理の持つ副次的な価値を顕在化させるというのが、今回やりたかったことです。でもこの企画、一歩間違うと類型的な『お母さんありがとうCM』になってしまう危険性があります。それを避けるため、映像に親を出さない、コピーにも『母』というワードを出さないことなどを、徹底していきました」(綿野さん)。さまざまな演出の誘惑に負けず、コンセプトを首尾一貫することに何より注力した。
現場では「お弁当が思った以上に似ていて焦った」というエピソードも。出演者も当てられるか自信のないまま臨んだが、見事全員正解した。公開後はYahoo!映像トピックスなどでも取り上げられ、11月現在、約19万回再生されている。「この動画で、日本のお弁当がちょっと豪華になる。そんな影響が生み出せたらいいですね」(富永さん)。
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スタッフリスト
- 企画制作
- 1-10HOLDINGS+ナイスレインボー+井村事務所
- CD+企画+AD
- 富永省吾
- 企画
- 綿野賢
- PR
- 住本宜子
- C
- 水谷日出晶
- PM
- 田村聡大
- 監督
- 狩野比呂
- 助監督
- 高橋りか
- 撮影監督
- 井村宣昭
- 撮影
- 関森崇
- 撮影助手
- 南利彩香、磯部義也、北村龍
- カラリスト
- 奥津春香
- 照明
- 角戸亮祐
- MA
- 小林丈泰
- ST
- 森久美子
- 出演
- 嶋佐和也、屋敷裕政、中村隆太、戸塚梨、森レイ子、川並淳一
- Special Thanks
- お母さんたち