消費者が選んだ広告コンクール、最高賞は東京ガス「家族の絆 母とは」篇など5点

日本アドバタイザーズ協会(JAA)は12月17日、プレス発表会を実施し、「第54回JAA広告賞 消費者が選んだ広告賞」の審査結果を発表した。

最高賞であるJAA賞には、新聞部門で味の素 和・洋 調味料群「和食は、引き算。洋食は、足し算。」、雑誌部門で三菱電機 三菱エレベーター&エスカレーター「世界昇降紀行」、テレビ部門で東京ガス 企業広告「家族の絆 母とは」篇、ラジオ部門でパイオニア販売 楽ナビ「いろんな道」、WEB部門でヤマト運輸 宅急便コンパクト「クロネコが箱を組み立て!?」がそれぞれ選ばれた。

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味の素 和・洋 調味料群「和食は、引き算。洋食は、足し算。」

審査経過および受賞結果について、審査委員長を務めた青山学院大学経営学部の芳賀康浩教授は次のようにコメントした。

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写真左から、消費者委員長を務めた第一三共ヘルスケア 取締役 常務執行役員 吉田勝彦氏、審査委員長を務めた青山学院大学 経営学部 教授 芳賀康浩氏。

「審査基準は、(1) 感性(好感、共感、親近感がもてる広告であるか)、(2)理性(わかりやすく、納得できる広告であるか)、(3)創造性(オリジナリティが感じられる広告であるか)の3つ。

『消費者のためになった広告コンクール』と銘打っていた一昨年は、その広告が“ためになった”かどうかという『理性』に消費者審査員の意識が向きがちだったが、今年はより作品の感性・創造性に重きを置いた審査がなされたように思う。

ファイナリストに選出された65作品に、これまでにない多様性が感じられたのも、そのためではないか。雑誌部門は、JAA賞を受賞した三菱電機の作品を含め、ファイナリスト作品のうち3つがB2B企業の広告だった。消費者が日常生活の中で触れることのない商品・サービスの広告においても、感性・創造性の高いクリエイティブが重要であることを示唆するものだと感じた」。

各賞の受賞作品および審査講評は以下のとおり。

【経済産業大臣賞】

宮崎県小林市 移住促進PR「ンダモシタン小林」

芳賀氏コメント
「見た後に『やられた!』と、もう一度見たくなる広告の優良事例。キャスティングが秀逸で、出演者の喋り方や、いかにもフランス映画のような演出も巧妙。風景や人といった小林市の特徴・魅力が随所に散りばめられている点も完成度が高い。この広告の展開後、小林市の『移住ナビ』のランキングは圏外から全国3位にまで急上昇したと聞いた。地域活性化という課題を取り扱った広告としてきちんと機能している点を見ても、経済産業大臣賞にふさわしい作品だと思う。」

【JAA特別賞】

アサヒビール アサヒスーパードライ スペシャルパッケージ
「東京でいち早く、桜が満開!~ 上野に桜の“新名所”誕生 ~」

芳賀氏コメント
「中吊り、駅貼り、柱巻き、デジタルサイネージ、イベントと、多様な作品がファイナリストに選ばれた。なかでも、最高賞に選ばれたアサヒビールの広告をはじめ、生活空間そのものを変容させる手法で、人々の生活動線にうまく入り込んだものが高く評価された。」

新聞部門

味の素 和・洋 調味料群「和食は、引き算。洋食は、足し算。」

芳賀氏コメント
「新聞という媒体の特徴なのか、消費者審査員は、この広告に対し、非常に分析的な見方をしていた。30段という広いスペースをうまく使っており、ビジュアルは和食と洋食の対比が面白い。メインのコピーが目を引き、ボディコピーも読ませる内容で興味深い。−このように、クリエイティブの各要素を高く評価する声が多かった。」

雑誌部門

三菱電機 三菱エレベーター&エスカレーター「世界昇降紀行」

芳賀氏コメント
「世界の観光名所で、三菱の昇降機が活躍するシーンを切り取った広告。出稿メディアは日経ビジネスやダイヤモンドで、受け手はビジネスパーソン。まるで旅行雑誌を眺めるような楽しい気分で、この広告を見たのではないか。雑誌部門では、この作品を含めファイナリストのうち3つがB2B企業の広告だったのが印象的。B2B広告でも感性・創造性のあるクリエイティブが重要であることを示唆しているのでは。」

テレビ部門

東京ガス 企業広告「家族の絆 母とは」篇

芳賀氏コメント
「東京ガスの企業広告シリーズは、こうした広告賞の常連作品。正直なところ、審査員も私も『またか!』と構えて見てしまったが、最後にはやはり目が潤んでしまうのは、さすがの一言。母と息子の日常を描き、日頃忘れがちな感謝の気持ちを思い出させてくれる、消費者インサイトに優れた広告だと思う。」

ラジオ部門

パイオニア販売 楽ナビ「いろんな道」

芳賀氏コメント
「短い時間に、音だけでいかに受け手の注意を引くかが問われるラジオ広告。ファイナリストには、最初の1〜2秒で受け手をぐっと引き付ける力のあるものが残った。最高賞に選ばれた『いろんな道』は、カーナビが案内する道を、ビジネスパーソンの“出世街道”になぞらえてコミカル・シニカルに表現した言葉遊びが楽しい広告。多くのビジネスパーソンにとって『あるある』と共感できるものだったのでは。」

WEB部門

ヤマト運輸 宅急便コンパクト「クロネコが箱を組み立て!?」

芳賀氏コメント
「消費者審査員からは、『これが、もしテレビだったら見たくないと思う』という意見が聞かれ、同じ60秒・30秒の映像でも、テレビとWebとでは異なる捉え方を消費者がしていることが印象的だった。昨今、Web動画ではイヌやネコをテーマにしたものはそれだけで話題になるが、受賞作はそれに加え、CGを一切使わないというリアリティが強かった。また、審査員から『ジングル、クロネコというキャラクター、コーポレートカラーの黄色といった要素の使い方がうまく、新サービスの印象も強く残った』という意見が聞かれ、広告としての仕上がりも優れていたと思う。」

【ベストパートナー賞】※JAA賞受賞作品を制作した広告会社・制作会社

新聞
電通、たき工房
雑誌
アイプラネット
テレビ
電通、電通クリエーティブX
ラジオ
電通、ランダムハウス
WEB
電通、アマナ


1961年から50年以上にわたって「消費者のためになった広告コンクール」として開催されてきた本賞。選考方法などを見直すなど今年4月にリニューアルし、名称を「JAA広告賞―消費者が選んだ広告コンクール―」に改めた。

リニューアル後、初回の開催となった今回の応募総数は2384点。消費者審査員100人による第一次選考を通過した126作品を対象に、有識者らで構成されるファイナリスト選考委員11人による選考会を行い、ファイナリスト作品65点が選出された。さらに、一次選考を行った消費者審査員100人の中から、年齢・性別を考慮して選抜した20人による選考会を経て、各賞受賞作品が決定した。

表彰式は、2016年2月26日に都内で開催される予定。

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