—今、中村さんが注目する海外での流行はありますか。
今年はシンガポール、ジャカルタ、バリといったアジアなどを中心に訪れていますが、それらの土地で注目しているのが、ラウンジにプールが付いた「ビーチクラブ」という業態です。おしゃれなプールにレストランやバーが付いているイメージです。
「ビーチクラブ」というフレーズが気に入ったし、面白いなと思いましたね。
—日本ではあまり見かけませんね。
僕がやりたいのは、日本にはまだないカルチャーを呼び込み、根付かせることです。最近、衣食住関連の大手企業から「ライフスタイル型店舗を提案してほしい」という依頼をよく受けますが、僕が考えるライフスタイルショップとは、日本にはなかったカルチャーを根付かせるためのものです。ですから、日本にどういうカルチャーを根付かせたいか、という思いが大切なんです。
例えばbillsは、日本にはなかった朝食カルチャーを根付かせるためのライフスタイルショップです。MAXBRENNER CHOCOLATE BARというチョコレート店は、チョコレートをカジュアルに楽しむカルチャーの発信地でもあります。日本にはゴディバの高級チョコかバレンタインチョコくらいしかチョコレートを楽しむ機会はありませんが、僕が初めてニューヨークを訪れたとき、カフェでチョコレートを楽しむニューヨーカーを見て「いいな」と思ったのがきっかけでした。
日本人が憧れる国や街、今ならニューヨークをはじめとする欧米の素敵なカルチャーを仕入れて、日本人のライフスタイルに影響を与えるような波をつくり、それらをスタイルに変えていきたいですね。
中村 貞裕(なかむら・さだひろ)
トランジットジェネラルオフィス 代表取締役社長
1971年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、伊勢丹を経て、2001年に「ファッション、建築、音楽、デザイン、アート、飲食をコンテンツに遊び場を創造する」を企業コンセプトに、トランジットジェネラルオフィスを設立。カフェブームの立役者として「Sign」や「bills」などカフェやレストランの運営を約60店舗手がけるほか、ホテル「CLASKA」、大阪の「堂島ホテル」「the SOHO」などの話題の施設やオフィス、商業施設、ファッションブランドのブランディングやプロデュースなど、仕事の幅を広げている。