本記事は『広報会議』1月号に掲載されたものです。
初の全社連動プロジェクト
「生鮮飲料への挑戦」——カゴメが9月から首都圏のコンビニエンスストアで発売した「GREENS」の報道資料に掲げられているフレーズだ。野菜と果実の食感や香りを活かした新ジャンルの野菜ジュースとして、発売当初からその売れ行きは好調。11月からは販路を首都圏のスーパーマーケットにも広げ、年内は売上目標通りに推移する見通しだ。
カゴメの野菜飲料といえば年間400億円規模の主力ブランド「野菜生活」があるが、発売から20年経った今、新たな飲用層を開拓する戦略商品が必要だった。9月9日に東京・表参道で行われた「GREENS」の商品発表会に出席したカゴメの寺田直行社長も、「『GREENS』の発売によって、定番商品の『野菜生活』では取り込めていなかった20~30代女性へアプローチしていきたい」と語るなど、期待を寄せている。
「生鮮飲料」という新たなカテゴリーが生まれた背景には、野菜に「鮮度」を求める消費者の嗜好の変化がある。「コンビニのカットサラダやジュースバー、そして自作のスムージーと、野菜の摂り方は多様化していますが、どんなシチュエーションでも野菜に“鮮度”を求める声は非常に多い」と説明するのは、商品のPRやプロモーションを手掛ける浮ヶ谷陽子氏(マーケティング本部広告宣伝部)だ。
そんな消費者の声を重視した製品を生み出そうと、社内横断プロジェクトが発足したのは2014年3月のこと。「FICプロジェクト」と名付けられ、ブランドマネージャーと研究開発部門を中心に、調達・生産、品質管理、そしてマーケティング、広報、広告など社内の関連部門から社員が集まり議論を重ねた。ちなみに、このプロジェクト名に冠している「FIC」とは、「Fresh Innovation Challenge」の略である。
全体会議によって、従来には例のない他部門と連動したコミュニケーション活動もスムーズに実現できるようになった。「PRの視点から流通対策や店頭での施策を考えたり、広告出稿の状況をプロジェクト内で共有したりと、プロジェクト全体で商品と売り方を一体化させていきました」。
ターゲットの若返りに挑戦
さらに企業広報の視点からも「GREENS」を戦略商品として経済・ビジネス媒体にも発信している。9月9日に行われた記者発表会は二部制で開催しており、第一部では寺田社長や商品企画担当の常田真希氏が登壇。第二部は芸能メディア向けに、モデルのアレッサンドラ・アンブロジオ、すみれをゲストに招くなど、媒体ごとにメッセージをすみ分けており、全76媒体が来場した。
野菜飲料市場におけるターゲットの若返りも、カゴメの新たな挑戦のひとつだ。「既存の野菜飲料は40代以上の男女がメインの購入者。GREENSは上質で洗練されたイメージとトレンド感を付与し、新たに20代~30代の働く女性にアプローチしていきました」と浮ヶ谷氏は話す。
発売時のPR活動も従来とは異なる手法で仕掛けていった。東京・表参道に9月10日から11月1日にかけて期間限定のジュースバーをオープンしたほか、テレビには約1カ月半前から朝の情報番組を中心にプロモート資料を持ち込んだ。「食感色々のベジタブルフード」「都内で楽しめる新食感ドリンク」などPR会社が「GREENS」を好む層に響くトレンドをまとめ、番組やコーナーごとの文脈に沿った提案で15番組での露出につなげた。
同時に、最も重視したのがSNS上での口コミをいかに広げるか。ジュースバーのオープン前日には現地でパーティーを開き、ブロガーやモデル、ブランドプレスなど277人が参加している。「特にInstagramで拡散されるよう、会場には写真を撮りたくなるようなグッズを配置するなど工夫しました。前例のないタイプのイベントでしたが、自社で実施したブランド認知に関する調査によると、『SNSを経由してGREENSを知った』という回答が最も多いという結果も出ています」。
このほか伊勢丹新宿店にも期間限定のジュースバーを設置したり、企業向け野菜宅配サービスと提携し女性社員が多数活躍している企業のオフィスへ「GREENS」を提供したりと、新たなユーザーとの接点開拓を続けている。現在は1都3県のみの販売だが、エリアを拡大し、3年後には100億円の売上を見込んでいる。
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