「おにぎらず」ブームで海苔が売れた! スピード内製で先手のPR

本記事は『広報会議』1月号に掲載されたものです。

2015年4月8日に公開した、内製によるYouTube動画。「自社の海苔を売り込む」のではなく、「つくり方」を純粋に伝える内容とし、11月には再生回数13万回に。

2015年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補語にもノミネートされた「おにぎらず」。海苔の上にお米と具材をのせてラップなどで包み込む「握らない」おにぎりとして、2014年秋ごろからネット上で注目され始めた。

「日々ウォッチしているGoogleアラートに“おにぎらず”の情報が入ってきたのは2014年10月上旬。これは何か仕掛けなければと、社内ですぐに議論を始めました」と振り返るのは、海苔や乾物を扱う名古屋市のメーカー・浜乙女の清水拓真氏だ。清水氏は商品開発部でマーケティングやPR業務を統括している。

「おにぎらず」のルーツはグルメ漫画『クッキングパパ』(講談社)にある。ある有名ブロガーが22巻(1991年発刊)に登場した「超簡単おにぎり」を発掘し、レシピサイト「クックパッド」でも紹介されるなど一気にブームが拡大していった。これにより、浜乙女でも焼き海苔の売上が急増したのだ。乾物業界では稀なこの動きに、清水氏はブームに乗り遅れてはならないと感じたという。すぐさま「おにぎらず」をつくりやすい「塩付のり全型」の商品開発に着手し、2015年3月16日に発売した。

「近年、業界にとって追い風の話題といえばコンビニエンスストアから人気が出た『恵方巻』くらいです。それも20年ほど前の話ですから、今回の新商品はかなりの期待を込めて市場に投入しました」。しかし、発売2週間前に競合であるニコニコのり(大阪市)から先に「瀬戸内海産おにぎらず塩のり」が発売され、二番手のスタートになってしまう。

その遅れを取り戻すべく、清水氏がこだわったのが一連のプロモーションのターゲット設定だ。「これまで、乾物業界は全国から小売店が集まる展示会で新商品をPRするなど、業界関係者向けのプロモーションが実は多かったんです。そこで今回はターゲットを消費者に絞り込み、20~30代や子育て層のライフスタイルに寄り添うPR戦略に切り替えていきました」。

その決断が功を奏し、新生活やレジャーでお弁当づくりの需要が高まる4~5月にかけて、市販用海苔の売上が前年比130%を超えピークを迎える。さらにこの時期、CBC『ゴゴスマ』、中京テレビ『キャッチ!』など東海エリアの情報番組のほか、東京キー局のバラエティ番組からも取材や素材提供などのオファーが続いた。そのフックとなったのは、4月に公開した特設サイトだった。

検索の上位表示を狙い、4月に公開した特設サイト。「おにぎらず」について中立的な情報を伝えている。ターゲット層に合わせ、かわいらしい清潔なトーンを重視した。

「『おにぎらず』と検索したら1ページ目に出てくるよう、内製でレシピやつくり方が分かる動画を発信しています。するとサイトを見たメディアからの問い合わせが相次ぎ、連日のように取材が入りました。3月末にはクックパッドの専用ページなども開設しており、マスでのPRとネット上の口コミ波及が一気に進みました」。

「生みの親」とコラボ実現
講談社と組み、純広告も制作。『モーニング』のほか、主婦向け雑誌『Como』(主婦の友社)に出稿。

次ページ 「内製でPRが高速・多様化」へ続く

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