マーケティングオートメーション導入の留意点
このようにソーシャルセクターでもMAの導入が進みつつありますが、導入すればすべてが解決され、収入や会員が急激に増えるといった誤った認識をもつべきではありません。また、業務が自動化されることによって捻出された時間は、別の業務に取り組んだり、新たな施策を考えるための時間となるため、業務時間そのものが削減されると考えるのも誤りです。とかくNPOでは、「ツールありき」の風潮があり、ツールが組織課題の多くを解決してくれるという思い込みがあります。以下、NPOにおけるMA導入にあたってのポイントです。
自動化の前に手動でマーケティングが実践できていること
MAを導入してマーケティング活動を自動化する前に、現状、提供サービスの価値の見極め、ターゲットの明確化とペルソナ設定、コミュニケーションツールの最適化、キャンペーンの実施と効果検証など、手動でもしっかりとマーケティングの基本が実践できているかを見直すべきでしょう。その上で、自団体で行っている業務のどの部分の効果を高め、どの部分が効率化できるのかという見極めを行わないと、まさに宝の持ち腐れとなってしまいます。実際に、企業においてさえ、MAに飛びついて導入したものの、ほとんど使いこなせていないという企業が存在しています。
MAの担当者を配置すること
MAの価値を最大化するためには、設定した各種コンバージョンまでのシナリオを策定でき、ツールを使いこなせる担当者を配置する必要があります。つまり、現状のマーケティング担当者が片手間で運用できるようなものではないということです。
カスタマイズできるだけのコンテンツを用意すること
前述のPLASではターゲットのステージを4つに、かものはしプロジェクトでは5つに分け、その人のステージに合ったコンテンツを出し分けています。これを実現するためには、過去のブログ記事など既存コンテンツの再活用、新規記事の作成など、コンテンツのバリエーションを確保しなければなりません。MAを活用してカスタマイズができるようになるということは、逆にそれだけのコンテンツ内容やアプローチ手段を用意しておかなければならないということです。
リアルな世界でのコミュニケーションを疎かにしないこと
全てがWeb上で完結できるわけではなく、リアルな世界でのコミュニケーションと合わせた活用が不可欠です。当事者意識を持ってもらいにくいNPOの活動は、直接対面で伝えることにより初めて活動の価値が伝えられることが多くあります。特に寄付などの支援を依頼する場合、リアルな接点を組み合わせることで目的達成の確度が高まるのです。
MAのエッセンスは、顧客基点でマーケティング活動を見直すこと。つまり団体基点ではなく顧客基点の発想へと意識を変革することです。NPOでは、ともすると自分たちの思い込みや思いつきで日々の業務を行いがちですが、顧客への理解を深めるためのツールであると認識する必要があります。
マーケティング コミュニケーション実践論
■井出留美
office 3.11 代表取締役
青年海外協力隊時代に手書きで配信した「パル通信」、1305号配信した「広報室ニュースレター」など情報発信力が強み。NPOを様々な賞へ導いた実績や企業・NPOの広報室長などの経験を持つ。わかりやすい講演が好評、全国からの依頼は330回。外資系企業管理職から震災を機に退職、起業。メディア出演170回。博士(栄養学)。東京大学農学系(農学部・農学生命科学研究科)広報室会議オブザーバー。
■長浜洋二
PubliCo 代表取締役CEO
かわさき市民しきん評議員/シャンティ国際ボランティア会戦略アドバイザー/NPO法人CRファクトリー コミュニティ・マネジメント・ラボフェロー
1969年山口県生まれ。米国ピッツバーグ大学公共政策大学院(公共経営学修士号)卒。NTT、マツダ、富士通でマーケティング業務に携わる一方、米国の非営利シンクタンクにて個人情報保護に関する法制度の調査・研究、ファンドレイジング、ロビイングなどの経験を持つ。著書に『NPOのためのマーケティング講座』。
■鎌倉幸子
(シャンティ国際ボランティア会 広報課長補佐/認定ファンドレイザー)
青森県弘前市生まれ。アメリカ・ヴァーモント州にあるSchool for International Trainingで異文化経営学の修士号を取得。1999年、シャンティ国際ボランティア会にカンボジア事務所図書館事業課コーディネーターとして現地赴任。2011年に同団体の広報課に異動。広報の仕事と兼務しながら東日本大震災後、岩手県での移動図書館プロジェクトの立ち上げを行なう。著書に『走れ!移動図書館』(ちくまプリマー新書)。
■井出留美
office 3.11 代表取締役
青年海外協力隊時代に手書きで配信した「パル通信」、1305号配信した「広報室ニュースレター」など情報発信力が強み。NPOを様々な賞へ導いた実績や企業・NPOの広報室長などの経験を持つ。わかりやすい講演が好評、全国からの依頼は330回。外資系企業管理職から震災を機に退職、起業。メディア出演170回。博士(栄養学)。東京大学農学系(農学部・農学生命科学研究科)広報室会議オブザーバー。
■長浜洋二
PubliCo 代表取締役CEO
かわさき市民しきん評議員/シャンティ国際ボランティア会戦略アドバイザー/NPO法人CRファクトリー コミュニティ・マネジメント・ラボフェロー
1969年山口県生まれ。米国ピッツバーグ大学公共政策大学院(公共経営学修士号)卒。NTT、マツダ、富士通でマーケティング業務に携わる一方、米国の非営利シンクタンクにて個人情報保護に関する法制度の調査・研究、ファンドレイジング、ロビイングなどの経験を持つ。著書に『NPOのためのマーケティング講座』。
■鎌倉幸子
(シャンティ国際ボランティア会 広報課長補佐/認定ファンドレイザー)
青森県弘前市生まれ。アメリカ・ヴァーモント州にあるSchool for International Trainingで異文化経営学の修士号を取得。1999年、シャンティ国際ボランティア会にカンボジア事務所図書館事業課コーディネーターとして現地赴任。2011年に同団体の広報課に異動。広報の仕事と兼務しながら東日本大震災後、岩手県での移動図書館プロジェクトの立ち上げを行なう。著書に『走れ!移動図書館』(ちくまプリマー新書)。
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