【前回記事】「マーケティングオートメーションはNPOマーケティングの切り札となるか?」はこちら
ファンドレイジング(資金調達)は、活動のための資金を集める行為と定義づけられています。そのための手段としてチラシの作成、ホームページの充実、ソーシャルメディアの活用など「方法」に注目されがちですが、きちんとステップを踏んで行う必要があります。
【起】団体が行っている活動は社会のどのような課題を解決するのかをクリアにする
社会の課題にどう向き合い、どのような社会の実現のために活動を行っているのかを明確にすることは必要不可欠です。それがないと、強い共感メッセージを発することができません。ファンドレイジングは、ファン「度」レイジング(仲間づくり)とも言われています。
目的を持たずに集まってきた人が組織を作っても、内部分裂をすぐに起こすでしょう。同じ目的に向かって進む仲間がいるからこそ、活動を加速することができるのです。
【承】SWOT分析で自分たちを知る
広報としての立場で常に意識をしているのは「団体のブランド」をどう維持し、生かしながら、資金調達のメニューを考えるかという点です。
経営課題の把握のために自分たちの強み(S=Strength)、弱み(W=Weakness)、機会(O=Opportunity)、脅威(T=Threat)を認識する作業をスタッフ、理事、ボランティアなど、さまざまなステークホルダーと一緒にSWOT分析をやると団体の状態が見えてきます。弱みを克服したり、外からの脅威を避ける議論も経営的な面では大切です。それ以上に、団体の強みや機会を活かすポジティブな発想をしていくと、スタッフのモティベーションも上がっていきます。「歴史がある」団体だと、それを出すことで信頼度を増すことができます。「難病の子どもたちに向き合う」団体ですと、その難病をかかる方やそのご家族が注目するでしょう。団体の特質する点を伸ばした広報をすると、ターゲットとなる方に届きやすくなります。
【転】ASK「募金のお願いをする」
人々が寄付をしない最もの大きな理由は「お願いされなかった」からだそうです。お金の話はしづらいものです。ただ寄付は社会をよくするための社会参加でもあります。募金のお願いをしないことは、人々の社会参加の機会をなくしていることにつながります。
団体の使命や事業を「共感する」メッセージを共に伝えていくことで、人々がその課題を認識し、解決のためのメンバーとなってもらうように呼びかけましょう。
共感メッセージのつくり方は2015年11月19日掲載の本コラムに書きました。それにプラスして注意する必要があるのは、業界の人間しか分からない用語を多用していないかです。国際協力業界の会議では「サスティナブルな社会の実現のため、アドボカシーの強化を行う」など普通に話されますが、一般の人たちに伝わるのか考えないと自己満足で終わってしまいます。
【結】THANKS「お礼を伝える」資金調達の黄金律は上記に述べたAskとThank
(感謝すること)と言われています。ご協力くださった方に感謝することを忘れてはいけません。激しくお願いはされたが、お礼がないとなると団体の信頼の低下につながります。
自分自身もポケットマネーから募金をするのは、一つの決断だと思います。同じように、寄付をしてくれた人がわざわざ時間を使って郵便局に行ってくれた、クレジットカード決済の画面に進んでくれたということに対して「ありがとう」という気持ちをスタッフは常に持っていたいものです。
また領収書への一筆書きも手間に思われるかもしれませんが、効果はあります。ダイレクトメールは開封されずに捨てられるケースが多いかもしれませんが、税制優遇が受けられるNPOの領収書が入った封筒はかなりの確率で開封されます。だからこそ、その中に入っているレターは考えて丁寧につくることをお勧めします。
寄付者が一番知りたいのは、お金が何に使われたかということです。領収書を送る封筒の中には、活動計画や報告など入れることで安心感が生まれます。
まずは【起】自分たちの方向性を見出し、【承】団体内の土台固めをして、【転】ファンドレイジングを実施し、【結】参加してくれた人にお礼を伝える。このサイクルがファンドレイジングの好循環を生み出していきます。
本コラムはこの回をもって、一旦終了となります。NPOをはじめとする支援団体が抱える課題、“マーケティング・コミュニケーション力”の向上に、少しでも本コラムの情報が寄与できれば幸いです。お読みいただいた皆さま、ありがとうございました。