ブランド戦略としての「物流」—“成功企業”は物流を重視する

負け戦は、物流軽視で負ける

ロジスティクスという言葉は、戦争から来ていることは、皆さんご存知だろう。ロジスティクスがうまくできないと、“戦争”には勝てないのだ。古くは、諸葛孔明が、腹心の馬謖を切り捨てた「泣いて馬謖を斬る」という言葉があるが、なぜ斬ったのかご存知だろうか。これは、「くれぐれもあの山に登るな。登ったら、補給路(ロジスティクス線)が絶たれるぞ」と常にロジスティクスを最重要視していた諸葛孔明が馬謖に入ったにもかかわらず、戦いが有利になると山に登った馬謖を、泣きながら斬ったのだ。

第2次世界大戦で、日本は、重要な資源の供給地だった東南アジアと日本をつなぐ太平洋シーレーン(海上の物資補給線)を軽視し、輸送船の護衛も付けずに次々と沈められ、最後の1隻の輸送船になった時に初めて護衛艦をつけたときには、時すでに遅しだった。敗戦の原因はこれだけではないが、基本の「き」だったのは間違いない。

企業活動に当てはめると、これは営業だけに優秀な人材を投入し、物流が弱体化し、売っても売っても遅配などでクレームを受けているのと同じである。

マーケティングの4Pと4C

マーケティングの4Pは、すでに本誌でもキーワードとして掲載されただろう。製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)で4Pである。この中で、流通の「Place」が物流にあたる。

ところで皆さんは、4Cはご存知だろうか?

4Pはメーカー視点であり、もっと買い手視点に立たなければならないと、米国の経済学者 ロバート・ラウターボーンが提唱した概念である (図2) 。

図2 マーケティング4Pと4C

マーケティングの4P
1961年にジェローム・マッカーシー(USA)が提唱

マーケティングの4C
ロバート・ラウターボーンが買い手視点を提唱

製品と言っても、その製品の機能が消費者にとって価値がなければ意味がない。価格と言っても、人によって価格のインパクトが違う。広告と言っても、顧客に届かないといけない。流通と言っても、顧客にとって便利でないといけない。というように、一つひとつのPを顧客視点に置き換えたのだ。

確かに、ペットボトル160円が高いか安いかは、人によって感じ方が違う。小学生が1日に何本もペットボトルのお茶を買う姿は想像できない。なぜなら、我々大人の160円と小学生の160円は重み(コスト)が違うからだ。年金生活者にとっての160円も同じである。

この4Cの中で「物流」は、「Convenience(利便性)」である。コンビニエンスストアチェーンの2万店舗で商品が置かれていても、見込み客がコンビニに行かないのであれば、流通を整備しても意味がない。購入するお客さまや購入の可能性のある見込み客が買うのに便利な場所に商品を置かなければ買ってもらえないからだ。メーカーからすれば、「2万店舗に置いているのだから、売れるだろう」と思うかもしれないが、購入者が「コンビニより百貨店のほうが便利だわ」と思うのであれば、その商品は売れない。

この「Convenience(利便性)」は、最近「スーパーコンビニエンス」という言葉を使いながら、見直されてきている。例えば、飲食店の宅配やコンビニの御用聞きなど、コンビニエンスを超えるコンビニエンス=「スーパーコンビニエンス」を目指して、競合より利便性を高め、勝ち抜こうということだ。

自販機で販売促進をしようという例もある。ドールのバナナ自販機は、バナナが買えない場所に自販機を置くことにより、バナナの販売だけでなく、宣伝にもつながっている。超小型食品スーパー(「まいばすけっと」や「マルエツプチ」)は、これまで食品スーパーとして出店できなかった場所に出店することにより、顧客を獲得している。これらは利便性を高めるために、「顧客の前に商品を置きに行っている」のだと言える。

次ページ 「商品力と製品力」へ続く

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