広告主はどう効果測定に取り組むべきか
そうなってくると問われるのが、はたして広告主はどのように効果測定をしていくべきなのかという点です。一つ忘れてはいけないのは、やはり広告主である企業側が目指しているのは細かい効果測定の数値を達成することではなく、最終的なビジネス成果をあげることだという点でしょう。
そういう意味でまず一つの王道と考えられるのが、日産自動車のいわゆるマス側の担当者である工藤さんが紹介されていたアプローチでしょう。
日産自動車では、テレビCMなどのコミュニケーション活動を通じて、自社に対する潜在顧客のイメージがどのように推移しているかを四半期毎の調査で補足しているそうです。
こちらのグラフにあるように、日産自動車は「電気自動車と言えば」という質問に対して選ばれる自動車メーカーとして安定してトップを守っていることが分かりますし、日産自動車の直近のコミュニケーション施策により「自動運転と言えば」という質問に対する回答として日産自動車を選ぶ人が劇的に増えていることが分かります。
こうしたキーワードのトラッキングは中長期でやるからこそ見えてくるものであり、バナーのクリックスルーレートやコンバージョン数などの細かい指標だけを追いかけていると忘れがちなものであると言えます。
当然、日産自動車としては、テレビCMによって販売店に来店を増やし、売上アップに貢献することも重要だそうですが、自動車は思いついた瞬間に買うという商品ではありませんから、長い目で見た認知向上も重要となります。これはやはり大量の視聴者にテレビCMという形で企業側のメッセージを届けることができるマス側の担当者だからこそできるアプローチだと言うこともできるかもしれません。
一方で、テレビCMが非常に強い日本におけるデジタル担当者のアプローチとして参考になるのが、日本コカ・コーラのデジタル側の担当者である豊浦さんが紹介されていたアプローチです。
日本コカ・コーラが扱うような飲料は、テレビCMのようなマス広告の影響が非常に大きい商材です。そのため通常のアンケートを活用した効果測定を行うと、デジタル施策はマス広告の成果の中に埋もれがちで、効果が見えにくいという結果になりがちです。
そこで、豊浦さんが挑戦されたのが、あえてテレビCMが大々的に展開される新商品発売よりも前に、新商品の味をクイズにしたキャンペーンや事前サンプリング募集などのデジタル施策を組み合わせることで、事前の盛り上がりを最大化する取り組みでした。
飲料のような商材において、新商品発売前に大々的にマス広告を展開することはコスト的にも機会損失が大きいためなかなか実施できませんが、デジタルであれば比較的柔軟に挑戦が可能です。これにより実際に「い・ろ・は・す もも」はこれまでの他のフレーバーに比べても好調なスタートダッシュを切ることができたそうです。
さらにコカ・コーラでは、Awareness Impact Modelというモデルによって、広告効果のメディア投資効果の算出を行っており、テレビCMに次いで、「ソーシャルボイス」つまりソーシャルメディア上の話題が想起率の向上に貢献し始めていることを確認できつつあるそうです。