2016年の「広告効果測定」は、一つの施策ごとではなく全体で見てみませんか?

魔法のように課題を解決する効果測定はない

いずれの事例や取り組みにおいても言えるのは、効果測定を自分の担当の範囲だけでなく俯瞰的に実施されている点。そして、それぞれの担当者の方々がいわゆる「効果測定」の議論で求められがちな一つの効果指標だけを意識してプランニングをされているのではなく、それぞれの立場からビジネス成果に貢献するために何をすればよいかと言うことを複数の指標を組み合わせて仮説を立て、新しい施策に挑戦し、そこから学んだことを元にまた挑戦を繰り返すという姿勢を持っているという点だと感じます。

デジタル施策における効果測定をどのようにすれば良いのかという議論は、ソーシャルメディアの黎明期から延々と繰り返されている出口のない議論ですが、実は一つの魔法のような効果測定指標というものはそもそもマーケティングにおいてはありえないということをまず結論とするべきではないかと感じています。

リーチを指標にするにしてもそのリーチの質が問われるはずですし、売上やコンバージョンを指標にするにしても、そのコンバージョンした人が満足しているかどうかが問われるはずで、本来はマーケティングの効果測定というのは一つのシンプルな指標だけで済むものではないはずです。

実際、ワールドマーケティングサミットのドン・シュルツ教授のセッションでも、広告の効果測定を過去の実績を元にキャンペーンベースで測定していてはダメだという明確な問題提起がされました。シュルツ教授が強調されていたのは、顧客はキャンペーンの時だけ、その製品やサービスについて考えているのではないのだから、年間を通じてプランの投資対効果を考えなければならないという趣旨の問題提起です。

そこで顧客の企業にとっての財務的価値を求め、それを元にマーケティング投資の効果測定をIRRを元に予測すべきと言うファイナンシャルプランニングモデルの必要性を強調されていました。

参考記事:広告大量投下だけでは勝てない時代に重要な3つのテーマを、ドン・シュルツ教授の講義から考える

もちろん、この議論はCMOが売上にコミットしているアメリカならではの議論であるとも言えます。日本においては製品開発部や宣伝部など組織が縦割りになっていることも多いですし、役割やKPIも分かれていることが多々あります。

また、当然マスやデジタルそれぞれの現場担当者からすると、総論としては売上のコミットという議論はあっても、当然自分が担当している部分の活動がどれぐらい売上に貢献しているのか手応えを得るためにも、シュルツ教授が行っているよりももっと細分化した効果測定というのは必須でしょう。

ただ、だからといってマスやデジタルの担当者が、自分の担当範囲で測定可能な狭い効果測定指標だけを見て活動をしていると、実はマーケティングコミュニケーション活動全体では効率が非常に悪くなっていたり、ネガティブな結果を招いていたりというのが実は良くある話です。

前回のコラムで書いたように、リーチだけを重視すれば当然従来通りのマス施策の継続が論理的に正しい選択肢になり、そのことがイノベーションのジレンマにはまるリスクを増すことになります。そういう意味で、是非、皆さんに今年チャレンジして頂きたいのは、効果測定の仕方を見直してみることです。

当然、効果測定の方法は業種や施策によって様々だとは思います。ただ、少なくとも一つの施策毎で分割して管理しすぎるのでは無く、部署横断で俯瞰的な視点から見ることに挑戦してみて頂ければ、新しく今年チャレンジすべきテーマが見えてくるのではないかと思います。

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徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)
徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

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