デジタル・シフトを成功に導くプロジェクトの進め方-<デジタル・シフトVol.5>

プロジェクトの空中分解を防ぐには?

そもそも複数の部門が関わるデジタルマーケティング活動の戦略実行のプロジェクト運営においては、その背景・目的・スコープ・WBS・役割分担・会議設計・成果物を明確にする必要があります。プロジェクトが立ち上がり、ステークホルダーが参画するプロセスで、「そもそも論」の説明や「不信感」払拭のコミュニケーション工数が増えてしまうからです。

またプロジェクトがとん挫してしまいそうな時には横の連携はもちろん、トップダウンでの各部門への指示が必要となるので、経営層のコミットメントも重要な要素です。私が担当した、とある会社のプロジェクトでは、プロジェクト途中でたびたび、他部門からの横やりが入りそうになりましたが、その際には担当者が副社長に「お達し状」を事前に書いてもらい、捺印もしてもらったものを持ち歩いて、交渉にあたっていました。これも、ひとつの有効な手段かもしれません。

この会社の場合は、経営層のコミットメントのほかに、全部門の部長が集まる部門長会議という場も有効に機能していました。現場の担当者レベルで、大モメしても次の部門長会議の際に、トップ同士で話をすることで、仕切り直して再スタートを切ることができたかからです。プロジェクトを推進していく上では、この「縦」と「横」の連携を同時に作っていくことが肝になります。

プロジェクトに「待った!」が入るのは、マーケティング部門が他の部門の業務にまで侵入してくるのではないか、という懸念を与えてしまったときです。そこでプロジェクトの設計においては、そのプロジェクトが対象とする領域を明確にすること、特に「スコープ外」を明確にすることが大切です。

特に、マーケティングを扱う時に、マーケティングとは何なのかという定義が社の中でも人によって異なるので、「自分のあずかり知らないところで、自部門の話をしている!」と捉えられて、反感を買ってしまうことが起こります。「あなたの部門が見ている領域はここであって、関連部分はほんのここだけです」とか。「あなたの部門に関わる情報を収集しているだけで、何か作業をお願いするわけではないです」といった仕切りを細かくし、丁寧に説明することで、プロジェクトに疑問を持つ関連部門の方々から徐々に理解を得ていきます。

プロジェクトのゴールを明確にしよう

また「プロジェクトゴール」の明確化も大切です。特に中長期のビジョンがあり、その最初のステップとしてのプロジェクトという位置づけの場合には、中長期の目標と短期での目標、ゴールを明確に定めるべきでしょう。

プロジェクトのカットオーバーは、CMSを導入したら終わりなのか、戦略が社長にオーソライズされたら達成なのか、プロジェクトの達成基準、実際にそれが、効果があったのか示すKGIをキックオフの段階で共有することがポイントです。

当社の場合もプロジェクト支援の際は、プロジェクトゴール(達成基準の設定)を計画前に定めています。戦略フェーズや提案内容をチェックし、一貫性の有無などキックオフに向け修正点を確認。次に「グローバルロジスティックスとしての成長」「売上高1兆8000億円の実現に寄与するWEBサイトでありたい」などクライアントとともにビジョンを定義した後、目指す目的・方向性を掲げます。できれば目的はチームの合言葉、テーマ、コンセプトとして通用するような、分かりやすいもの1つに絞り込むのが理想です。

目的を指標化し、客観的に判断できるKGIを設定する(できる限り定量的に計測可能なものにする)。そして最後にKGIに対するコミットメント(成果目標値)を定める。この成果目標が達成できたときがプロジェクトの100%の成功であることを意味します。プロジェクトの本質を掴み、一貫してぶれずに進行することが大切なのです。


田島 学 氏(たじま・まなぶ)
アンダーワークス 代表取締役社長

早稲田大学政治経済学部卒。南カリフォルニア大学留学。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)にて大手企業Web CRM戦略立案、Webを利用したロジスティックス改善プロジェクト、ダイレクトチャネル戦略立案等に従事。セキュリティ認証事業ベンチャーの立ち上げを経て、アクセンチュアとソフトバンクのジョイントベンチャーであるイーエントリーにて、海外IT企業の日本市場進出コンサルティングを行う。2004年よりコンサルタントとして独立、多くのWebサイト調査分析/戦略立案/構築プロジェクトに参画。2006年4月、アンダーワークスを創業。

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