SMAP会見は「テレビ放送のライブ配信化」の象徴
この日の放送の高視聴率がソーシャルメディアの力によるものなのか、いまひとつ確認できませんでしたが、特別なイベントを告知することで、多くの人が反応するのはわかった気がします。
この1月18日のSMAP会見で起こったのは「テレビ放送のライブ配信化」だと言えないでしょうか。『下町ロケット』がいいドラマなので視聴率をとったのとは、少し分けて考えるべきではないかと。そして、LINEをはじめ、いまライブ配信が盛んになりかけてますが、その可能性が大いに示された出来事だと言える気がしています。
「ライブ配信」と「放送」をきちんと区別したほうがいいなと思うのです。いま動画配信サービスが次々に登場していて、去年のNetflixなどSVODの流れに続いて波が起こりそうです。でもよくよく聞くと、新しい動画配信には、放送的なものとライブ配信的なものが両方あって、分けて考えないといけない。
ライブ配信にはこのSMAP会見の一件を見ても大いに可能性がある一方で、放送的な新サービスには大いに不安を感じてしまいます。
ライブ配信とは、限定的な動画の生配信のことです。つまり「イベント」なのです。今日の夜、X時から、○○チャンネルで誰々が何々をやるよ!そんなイベントをネット上で開催するのがライブ配信です。これを視聴するのは特定のコミュニティの参加者です。ミュージシャンやアイドルや作家が演奏したり唄ったりトークしたりするのを、そのファンが視聴する。告知は何らかのソーシャルメディアやコミュニケーションツールを使って、あらかじめ括られているファンに知らせるのです。だから、集客が読める。
SMAPの生会見の場合は、対象となるコミュニティが“日本中”だったので地上波テレビで成立しました。通常のミュージシャンやアイドルならネットで十分でしょうね。
放送はそういう限定的ではなく、毎日一定時間もしくは24時間、定期的に、習慣的に動画配信を行います。こちらも特定のファン向けにはなるでしょうけど、私はこれ、ネット上でやるのは向いていないと思うのです。
だって地上波テレビの放送でさえいま、なかなか大変になっているのですから。あれだけ予算をかけて、プロたちが集まって、テレビ受像機というかなりの普及率の装置を介して行う放送が、いま徐々にきびしくなっています。ネットでおなじことをやって、維持できるのでしょうか。制作費に見合う広告費がとれるのでしょうか。放送時間ずっと視聴者の意欲を引きつけられるでしょうか。
地上波テレビがあるうえに、BSチャンネルが出てきてCSもあって、こんなに放送が必要なのかと思います。そのうえネット上でも放送をやるニーズはどこにあるのか私にはわからない。
不思議なことに、けっこうみんな“放送”が好きなんですよ。新しい形態の放送ができるので、チャンネルが公募になる。わが社も手を上げよう。いやいやと反論が出ても結局、放送をはじめてしまう。
NOTTVだってもうすぐ終了です。あれだけお金をかけてドコモのお店に行くと勧められて、すごい企業体力をかけて、なのに終了してしまいます。
放送はこれ以上いらないよ。
テレビ局の事業も、オワコンだと言われますけど、番組のせいではない。“放送”という形式のニーズがもうなくなってきているのです。でも番組が放送とは違う仕組みで視聴できるなら、見てもらえたりする。だからSVODは伸びるのだと思います。テレビ番組が評価されてないのではなく、“放送”が時代に合わなくなっているのです。
動画配信サービスが今年ぞろぞろ出てきます。ひとつひとつ、みなさん注意して見てください。ああそれは放送なんだね、というものと、ライブ配信だね、というものがあります。分けてとらえて、行く末を想像してみると、いろいろ面白いと思いますよ。どれがどうだとは、ここでは申しませんけど。