Cook DoのCMがおいしそうに見えるのは、研究と執念の賜物だった!(ゲスト:佐藤由紀夫さん)【後編】

若いプランナーはCMの評判を聞く機会が減っている

権八:例えば、クドカンのドラマや映画って、いまだに多くの人が見ていて、それこそ若い人だって見てますよね。若い男女が出てくる会話があるとしたときに、僕らの世代よりも同じような世代の20代の子達が自分達の感覚で言ったり、書いたりしたほうがよほどビビッドというか、きそうな気はするんですけど、なかなかそういうの出てきにくいんですか?

佐藤:トライして、オンエアされて、世の中の評判を聞く機会が少なくなっていると思う。
形にならないので。前はペーペーであれ、何かしら形にすればオンエアされて評判もあり、自分で見て、「あー、やばい」と思う。その機会がないですね。昔より圧倒的に少ない。

澤本:テレビの話?

佐藤:テレビ。ラジオCMってつくってます?

澤本:ラジオCMは会社にそこそこ転がってるけど、僕らのところに来ない。だから、ラジオCMをもらいに行ってます。「つくりましょう」と言ったり、転がってるのをもらってきて、若いプランナーにやってみろと。ラジオは音じゃないですか。セリフはそれで磨かれるから、ラジオCMをいっぱいつくったほうがいいと思うんですよ。

佐藤:ラジオCMはディレクターもできるし、いいですよね。

澤本:僕は自分のセリフをラジオでつくったという気持ちがあって。原稿を書いてるじゃないですか。A、Bという役割があって、ナレーターにA、B読ませると面白くない場合があって。それで、「AとBの役を逆にしてくれ」と言って、逆にするとよくなったり。Aの人に「ちょっとオカマっぽくやってくれ」と言うとよくなったり。

佐藤:それはラジオならではですよね。テレビじゃ無理だもんね。

澤本:テレビでそれやると怒られちゃうからね。

佐藤:そんなのおれら聞いてないよって言われちゃいますからね。

澤本:その場で変えていって、音ってこう変わっていくんだという練習はほとんどラジオのときにやったから。

佐藤:そうですね。そういう体を動かすみたいなことをやる機会が減ってるんだと思う。そういうのって体を動かすってことじゃないですか、書くのではなくて。さっきの卓郎が、クドカンの話じゃないけど、脚本を買ってきて写経してるんですよ。

一同:へー!

佐藤:たとえば気に入ったCMとかのセリフを書き出して、15秒でどれぐらい入るか、30秒でどれぐらいかみたいなのを切り取ってみて、どれぐらいのドライブ感が出るかをずっと紙でやってるんですよ。でもそれを試す機会がない。本チャンになっちゃうから。テレビだと、「あーっ」と思ったところでもう遅いじゃないですか。ディレクターに言うけど、そこまで直らない。ラジオだといくらでもこねくりまわせるから、卓郎がやってることは面白いけど、本番でのトライ&エラーの経験がないですね。

澤本:失敗することがなかなかできないからね、今。

佐藤:そうですね。お金も高くなったというか、かなりかかっているから。このタイミングで言うのはなかなかの度胸だぞっていうときありますからね。機会がないのかもしれない。

澤本:それこそ洋基くんがこの世界を変えた人の象徴みたいな感じのことを言ったけど、冗談抜きで、じつは白土さんが僕に言ったんですよ。

権八:白土謙二さん。セブンイレブンのCMなどで一世を風靡された。

澤本:洋基くんは白土さんのところに最初に行ったことがあるでしょ。その後、僕は白土さんと打ち合わせがあって、白土さんから「最近のプランナーはそういう人達が出てきたときに彼らとどう闘っていくかなんだよな」と。「そういう人達」というのは洋基くんのことで、白土さんが洋基くんの発言で印象的だったことがあると。白土さんが「この15秒のCMの中でこれを言わなければいけない」と言ったら、洋基くんが「え、1つのCMの中に3つ商品を入れちゃいけないんですか?」と返したんだって。

中村:僕、言いましたっけ、そんな恐れ多いことを(笑)。

澤本:出自がネットだと発想がフリーというか、「逆に3ついったほうが面白くなるじゃないですか」という意見を言ったらしいんですよ。「そういう人がついに現れたか」みたいなことを言っていて。

次ページ 「広告業界以外のライバルとどう戦っていくか?」へ続く

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