広告業界以外のライバルとどう戦っていくか?
中村:Web動画がちまちま流行っておりますが、それには尺の限界もないし、規制もなくなってくるから、そういうことがいくらでもまかり通ったりしますね。今はそういうほうに興味がある若者が多いんですかね。
佐藤:多いですね。そのほうが増えていると思う。
中村:僕もじつは15秒CMが全然できないというコンプレックスがあって。あの中でやろうとすると右脳的な、先ほど「気持ちいいセリフ」というお話がありましたが、そういうものに対する訓練をちゃんと積まないとできない気がしています。Web動画だと、まず初めにこの企画そのものが世の中的にどうシェアされるか、こういう風に面白いと横に広げることをまず考えて、それから逆算して動画をつくるんですね。だから、尺が最後になる。そういうのばかりやっていると、どんどん15秒CMと遠くなっているなと。
佐藤:いいよね、それ。たぶん、そっちのほうが若い人には魅力的なんじゃないですかね。どうしても、そっちにいきがちというか。
澤本:そっちにいったときの問題って、じつはライバルが広告業界だけじゃなくなっちゃう。
佐藤:違いますね。開かれちゃいますね。
澤本:ラジオCMの話に戻ると、僕はラジオCMのACCの委員長をやっていて、審査員でグランジの遠山くんを入れて、話をしていたら、「これ書ける」と言うんですよ。「書いてみたい」と言うから、グランジの人達を集めてラジオCMを書いてもらったんです。原稿を集めたら面白いの。
佐藤:やばい(笑)。
澤本:やばいの。それもかなり面白いんですよ。電通の他のプランナーの子たちも呼んだわけ。同じ課題でコンペ的にやったんだけど、電通の人はみんなうまいんですよ。うまいけど、過去に聞いたことがある流れだと。でも、グランジの人達は全く違う流れから攻めてくる。最終的に商品になんとなく落ちてるような感じがするのでクライアントがOKしちゃうの。ビックリして。お笑いの方でこうだから、放送作家や文筆家の作家が入ってきたらと思うと、ラジオCMだけでもライバルがいっぱいいると思う。
佐藤:なるほど。
澤本:同じように恐らく動画はもっとうまいことをやれる人がいるじゃないですか。ただ、面白いということが目標であれば。Webって考査はあまりないでしょ?
中村:ないです。全くないです。
澤本:考査でダメなことがないとすると、昔の「元気が出るテレビ」を今流せない状態と一緒で。
佐藤:あれは今はもう考査でどれもこれも無理だもんね。
澤本:それをバンバン流せてアクセスを稼げたらそれでいい、とほめられるんだったら、いいじゃないですか。
佐藤:革命だ。本当は権八くん、そっちのほうにいったほうがいいんじゃないの?
権八:そうですね…。まあ、そっちのが得意というか、ようやく時代が(笑)。僕らは考査やクライアントとのいろいろなやり取りの中で表現が丸くなってしまうことはよくあるけど、それでもね、白土さん繋がりで言うと僕が新入社員のとき「広告業界じゃない他ジャンルのエンターテインメントとどう戦うか。広告というエンタメが他のジャンルよりも魅力的に見えてるか考えろ」とおっしゃっていて。当然と言えば当然だし、どこかで芸人とかよりいいセリフやいいコント書かなきゃって、特に若いときはいつも思いながらやってましたけどね。
澤本:今言ってくれたみたいに、僕らがお笑いの方よりもいいセリフを書かなければいけない。それはやっぱり僕らが精進しなければいけない。ある部分に特化して、テレビCMやラジオCMでも、代理店、コピーライター、プランナーに頼めば「この秒数」という制限があったら絶対にいいものができるというプロ性があって、成立していくじゃない。その人達に頼んだWeb動画はもっといいみたいに、どこかにプロ性を持ってないとダメだと思う。そうじゃないと、みんなどれやっても中途半端となるのが怖くて。
佐藤:そうですね。
澤本:そういう方向にいきがちなんじゃないかなという気がしているんですよね。