クリエイティブを人に「教える」ことはできるか
権八:由紀夫さんは今じゃ“うまそうCMの大家”みたいになってるけど、同じ味の素でも宮沢りえちゃんの出ていたほんだしのCMみたいな、心にくるものもあったし。昔で言うと、たかの友梨さんの「心のうさぎ」という、普段はうるさいシノラー(篠原ともえ)がしんみりくるCMもあるよね。
佐藤:タレントさんをどう使うかだよね。いいなと思ったタレントさんをこうしたら一番いい、誰も使ってない使い方でこうやったらかっこいいみたいに。簡単に言うと、たぶん今広瀬すずちゃんが悪役をやったらすごいじゃないですか。そういうことですよね。これちょっとヤバイみたいな感じにさせると勝ちだよね。
中村:CMの話やクリエイティブの話をもっと聞きたいんですが、わりとお時間がきていて。
澤本:僕先に帰るから、3人でやってたら。
中村:どういうことですか!?
澤本:いや、面白い話を続けて。もったいない。
佐藤:よくあるの、こういうこと?
権八:えーと、ないかな(笑)。
澤本:中座するの初めてです。
権八:途中から入ってくるということはあった。俺だけ1人でずっとやっていて。
佐藤:そういう感じなんだ。すごいね、ラジオって。
澤本:いなくても悪口言わないでね。
佐藤:・・・本当に、去って行ったと(笑)。
中村:そろそろお時間なので、広告のクリエイティブ職を目指してる学生に一言もらえないかなと。
佐藤:一言ねぇ・・・。みんなうまいこと言ってんの?
権八:いや、助け舟じゃないけど、若い人に技術やセリフ、グルーヴ感、クリエイティビティみたいなものを教えることは難しいじゃないですか。突き詰めるとセンスみたいなことになっちゃうという実も蓋もない話がある。でも、それを聞いている学生や若い人が何だよ!って思っちゃうのか、いや、だからこそ私には俺にはチャンスがと思うのかはその人次第じゃない。なんて言えばいいんでしょう。ってゴメン、全然助け舟になってなかった(笑)。
佐藤:俺は美大出身で、美大ってセンス100なわけよ。それ以外ない。だって、技術なんて2年もやれば飽和しちゃうから。色をむらなく塗るとか、どうでもいい。発注してしまえばいいから。今は全部Macでできちゃうから、平たく塗れなくてもいいんだよね。色をどう合わせて、どのへんでやめるかみたいなのはセンス以外、何%でやめろという教科書はないので、100%僕らはセンスでやってきたから、教え合うというのがなかなか。
中村:教えるのは難しい。
佐藤:できたものに対して批評はできるけど、前もってこうしろと言ってやらせることはほとんどない。だから、卓郎くんなど、東大の人達がやってるトレーニングは本当に素晴らしいと思う。写経というか、CMのセリフも抜き出すの。それをテキスト化して、分量を何となくつかむことをずっとやってる。15秒にしてはセリフいっぱい入ってるなと思ったらすぐに書き出す。短いセリフでこれで持つんだというセリフをや書き出してみたりね。それで培われるというか、ちゃんと勉強できる範囲のセンスの磨き方。それ以外はほとんど磨くことができないよね。
権八:それで言うと、語弊があるかもしれないけど、じつはさっきのラジオCMでトライ&エラーをして学んだという話があったじゃない。でも、僕もそういうのはやってないですよ。すぐテレビに放り込まれちゃったから、ラジオ数えるほどしかつくってないし。
佐藤:でも、権八のラジオCM面白いよ。「飲んでー!飲んでー!はい!」ってあったじゃん。研修でやったやつ。
権八:あったね(笑)。放送作家の鈴木おさむさんが駆け出しの頃に「芸人さんの気持ちをわかるために芸人をやれ」と。それで1年ぐらいステージに立って、いっぱい寒い思いをして、スベッて恥かいてというのを繰り返して、だんだんわかったと。飲み会でもナンパでもラブレターでもなんでもいいけど、本気で心掴みにいってスベって恥かいたり…。
佐藤:本番が何回あるかだよね。生きるか死ぬかのところを何回通り抜けてきたかでだいぶ違う。練習じゃなくて。ブルーハーツが言ってる「本当の瞬間」ってやつ。
中村:残念ながらお時間です。みなさんの質問やお便り、何でも構いませんのでドシドシくださいませ。メールアドレスはsuguowa@tfm.co.jp。また、「すぐおわ」Facebookページにコメントを書いていただいたものもお便りとみなして、どんどん読んでいきます!
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構成・文 廣田喜昭