ECを始めて見えたお客さまの行動
加藤 これまで店頭では、POSデータという購入した後の情報しか取得できませんでしたが、オンラインでは購入前の行動まで把握・分析することができます。マーケティングの基本はお客さまを知ることから始まると思いますが、その点でEC事業が全社的なマーケティングに与える好影響も出てきているのではないですか。
高橋 オンラインでの行動分析から多様なインサイトを得られるので、それを店頭でのマーケティングにも生かしていきたいと考えています。
加藤 最近、BIツールの導入をご支援させていただきました。
高橋 1カ月前に導入したのですが、実はそれから出社時間が早くなったんです。というのもデータを見ていると、新しい仮説を次々に思いついてしまって、部下が来る前に調べてほしいことや、試してほしいことを指示するようになりました。
加藤 データを基に仮説をつくり、実証して効果を検証する。デジタル時代のマーケティングでは、高速でPDCA
を回していくことが不可欠ですし、高島屋さんが向かわれている方向性は正しいと思います。
強みの「提案力」で得意カテゴリを拡大
加藤 ギフトでの成功が証明するように「提案力」が高島屋さんの強みの一つだと思います。この強みを生かし、ギフト以外に力を入れたいと思っているカテゴリはありますか。
高橋 例えば、ワインは親和性が高いのではないかと考えています。EC市場において独自性を出すことが重要であり、ギフトの次はワインなど単品軸で、「○○なら高島屋」と言っていただけるような得意なカテゴリを増やしていく戦略を考えています。
加藤 提案が求められる商材にフォーカスして進めていくということですね。
高橋 はい。その際、ECと店頭のすみわけをどうつくるかも課題です。例えば、今はこだわりのワインは店頭で、デイリーに楽しむワインはECでといったすみわけも必要ではないかと考えています。店頭に陳列できる商品数には限りがありますので、店頭空間を空けるためにネットを使うという方法も検討しています。
加藤 高橋さんが考える、高島屋のデジタル活用の理想像とは。
高橋 企業側の意思でECに集客しようと考えるのではなく、お客さまが自由にストレスなく、あらゆるチャネルをシームレスに行き来できるようになることです。
加藤 一方でお客さまがシームレスに動けるデジタル環境では、高島屋だからこそ提供できる価値を改めて見つめなおす必要がありますよね。その点で、高橋さんが力を入れてやってきた顧客分析や行動分析が、ますます意味を持ってくると思います。