【前回記事】「「CES2016」現地レポート(6)米国経営層は何を発信したのか? セッションから探る今年のトレンド」はこちら
経営レベルで新しい流れに向き合う
本記事で全7回にわたる「CES 2016 REPORT」は最終回になる。今回はラップアップでまとめたいと思う。今年、筆者が強く感じたことは、米国企業のスピードの速さだ。多くの企業は、コンセプトではなくビジネスとしてIoT化する産業、自社のデジタル・トランスフォーミングに向けての取り組みを発信していた。AT&Tは、昨年発表したIoT向けデータプラットフォームの事業展開をすでに始めており、IoT領域で多くのプロジェクトが動いていると発信されていた。また加速するため、多くの企業が異業種同士のアライアンスに取り組み、さらにAPIによるエコシステムを前提としたプロダクトを世に出し、事業のスピードを加速させている印象を持った。
またマーケティングの分野においても、チーフ・デジタル・オフィサー、チーフ・テクノロジー・オフィサーがプロダクト開発、企業経営、マーケティングなどの分野にテクノロジーをどのように採用するか、またUberのようなディスラプターとどう向き合うかを真剣に議論をしており、経営レベルで新しい流れに向き合っているということを肌で感じることができた。
さて、日本企業はいかがだろうか?非テクノロジー企業の役員クラスの層の方は、自社ビジネスのデジタル化、ネット化に向き合っているだろうか?Target(米流通大手)や、フォードの経営層の中には、自身も自社もデジタル業界の人間であると宣言していた。さらに彼らは同業他社ではなく、まったく新しいところから競合が現れ、市場を塗り替える。それがテクノロジーでありデジタルだと自社を含め警鐘を鳴らしている。「アドタイ」読者の皆さんは、CESで発表される魅力的なガジェットだけでなく、そうした業界の変化、米国経営者の目線に、これからのヒントを感じていただけるのではないかと思う。
最後に会場内で出会った日本から参加していた知り合いに、今回の感想や視点について突撃インタビューした内容を紹介する。その場で決めたインタビューなので、話を聞いた対象者の偏りについてはご容赦いただきたい。
回答者:電通国際情報サービス 高橋 英昌氏
—CESに来た目的は?
自動車関連の技術動向を確認しに来ました。特にコネクティッド・カーを支えている周辺の要素技術について最新の同行をウォッチしています。
—コネクデッド・カーの技術動向としては、どのようなものがあるのでしょう?
画像認識技術やディープラーニングなどは注目しています。NVIDIA、Intel、Qualcomm。あとは、フォードなどの自動車会社の取り組みやAI関連などにも注目しています。
—特に面白い展示エリアなどありましたか?
サンズの1階(EUREKAゾーン)に出展している、ベンチャー企業や大学系の出展クオリティは高いと思いました。アメリカはやはり、ベンチャー関連の展示が一番魅力的だと思います。
EUREKAゾーンは、主に新興企業や大学など小規模な展示がたくさんある会場で、新興技術、ユニークなサービスなど、次世代を担う種を見つけることができるエリア。多くのCES来場者が一番おもしろいと答えていた。来年CESに行く方は必見だ。
回答者:電通 CDC 土屋 泰洋氏
—CESへ来た目的は?
まずは、トレンドの確認ですね。個人的にも今年のCESがどうなるか?非常に気になっていました。昨年は、IoT関連でウェアラブルが元気だったので、今年はそのIoTがどう変化しているのか?に注目していました。
前評判から、ロボット関連がもっと増えるかと思っていましたが、あまり増えていない。それどころか、むしろ減っている。CESはなくなったものや、新しく出展されるものをウォッチするのが良いと思います。
—他に印象はありますか?
今回、感じたのはハードウェアで一通り、広くあまねくネットに繋げるってことをやっているという印象を受けました。懐かしい言葉でいえば、ユビキタスですね。次は、これをどう活用するか、最適化するかが課題になっていくのではないでしょうか。
ハードウェアは成熟してきており、全部同じに見えてしまう。取得したデータをどう活用して、どのようにオートメーションするか?コグニティブ環境を構築するかなど、トレードショーでは見えない点が重要になってきているのかもしれない。
IoT系のプロダクト(ガジェット)は、筆者もすでにかなり出きってしまった印象がある。IoTはすでに新しいコンセプトのプロダクトを提示するフェーズから、利活用(クラウド上でのデータ活用やエコシステム)のフェーズに移ったということだ。
森直樹(もりなおき)
電通 CDC部長 事業開発ディレクター、クリエーティブ・ディレクター
光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。デジタル&テクノロジーを活用したソリューション開発に従事し、AR(拡張現実)アプリ「SCAN IT!」、イベントとデジタルを融合する「Social_Box」、「SOCIAL_ MARATHON」をプロデュース。さらにデジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。最近は、経営や事業戦略に基づくUI・UXデザインや、ネット事業モデルによる事業革新の支援プロジェクトに取り組む。 日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会の幹事(モバイル委員長)。著書に『モバイルシフト』(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST (INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia (PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo 公式スピーカー他、講演多数。
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