「金沢」だからこそ実現した仕事
—水口さんは東京にも拠点をお持ちで、宮田さんは金沢に移住。スタイルは違えども、金沢だからこそできた仕事はありますか?
水口:金沢だからということで言えば、「Books under Hotchkiss」をオープンできたことは、とても大きかったですね。ここは毎回特定のアーティストを取り上げ、作品を展示するギャラリーと、そのアーティスト本人が選書した本が購入できる空間があります。同じことを、東京でやれば運営費だけでも相当掛かります。オフィスの立地は悪くないのに、東京と比べてかなり家賃は安い。
こういう空間をつくることで、今まで広告の枠組みでやってきたこと、受注一辺倒だった仕事が変化し始めました。訪れた人に、地元で活躍する人を紹介する。逆に東京で活躍している人を紹介することもできる。自分から何かを発信する拠点をつくれたのは、大きいですね。
宮田:ぼくは、いまでも東京の仕事が多いのですが、仕事をする仲間は地元や地方のクリエイターばかりです。何かを投げかけると、それぞれ全く違うアプローチで応えてくれます。東京に居たときよりもクオリティが高くて、アイデアも面白いですね。
さらに、地元の人たちや行政もバックアップしてくれます。例えば、都内にいるときに東京都知事に会う機会なんてないですが、ここでは市長と直接話ができたりする機会もありました。民意をくみとりやすいと思います。
—金沢市のバックアップもあると聞いています。首都圏などからクリエイターの誘致を推進するための市の制度は利用されましたか?
水口:ぼくは、この制度に随分お世話になりました。今後、ホッチキスと同じようなことを考えている人たちにとっては、後押しになる制度だと思いますね。
宮田:ぼくの時には、その制度はありませんでした(笑)。
ぼくは、自治体は「誰でもいいから来てください」という考えではいけないと思っています。そこにも選択と集中が必要で、地域性があった方がいい。金沢市は、「クリエイターやアーティストに来てほしい」、という意思をしっかり発信しています。だからこそ、クリエイターにも、その思いは伝わっているんじゃないかと思っています。
—最後に、金沢に移住して良かったことと、移住を考えている方へのメッセージをお願いします。
宮田:ぼくは生きているうちに好きなことを全うしたいんです。金沢では、それがやれているから、「ああ、来てよかったなあ」と思います。街並みは綺麗だし、食べ物はおいしいし、家族とゆっくりする時間もとれる。そういう生活を望んでいたので、理想的です。
クリエイターとして地方への移住を検討しているのなら、まずは出身地であろうとなかろうと、興味のある場所にどんどん行ってみるべきだと思います。あとは行動あるのみ、ですよね。
水口:金沢って、街のサイズ感がいいなあ、と思うんです。大体の場所が歩いて見て回れるし、出会いたい人ともすぐにつながれる。人の顔が見える規模の街っていいなあ、と思いますね。
4年後にはオリンピックも控え、日本全体で見てもさらに海外からの旅行者が増えると思います。だからクリエイターは今後、世界に向けて日本の良さ、地域の良さを発信していく必要がある。そこで重要になるのは、地域のどこを抽出して伝えるのか?という問題です。その点は、コピーライターや広告関係者の得意分野ですよね。
地方だからこそやるべきこと、つくれる仕事はいっぱいあると思いますよ。
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