人にしかできない“クリエイティブ”とは何か
データから見つけた問題に、デザインとテクノロジーで、これまでになかった答えを出す。“新たな答えを出すもの”として、「これからデザインやテクノロジーの力がさらに増すのは間違いない」とイナモト氏は話す。
それは、広告の世界的な祭典「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」にも表れる。「カンヌライオンズ」には昨年、90カ国以上から1万2000人規模で広告関係者が集まった。10年前までは広告代理店や制作会社が主だったが、ここ2、3年で存在感を示すのは、フェイスブックやオラクル、アドビといった企業だ。自動車メーカーが「東京モーターショー」に出展するグーグルやアップルを眺めている、そんな構図が浮かぶ。
では、いわゆる広告従事者は、どんどんテクノロジーに追いやられていくのだろうか。
「これは一つの比喩だが、10年後、居酒屋のキッチンスタッフのような職業はないと思う。おそらくロボットの仕事になる。しかし、調理師やシェフという職業はなくならない。両者の違いはなんだろう」
「それは新しいレシピをゼロから生み出せるかどうか、だ。決まったレシピに従って、間違えずに効率よく料理を作るのは、きっと人間よりマシンのほうが得意だろう。けれど、目的や目標を定めたりして創造するのは人間のほうが長けている。つまりクリエイティビティ(創造力)だ」
メディアや広告ビジネスの前提となっているのは、広告枠を売り、その枠に収まるアイデアを作るということだ。数十秒のCM枠や白いページ、広告看板に当てはまるモノを作るのがクリエイティビティだと唱えられてきた。「これまでの広告やマーケティングは、メディアの枠から始まっていた。つまり出発点が1だった」
「もちろん1から始めることが間違っているわけではない。ただ、これからの本当のクリエイティビティはゼロから始まる必要があると思う。いずれにしても、クリエイティブであることが、生き残る術だ。クリエイティビティこそが、最後まで人間が人工知能に優る点だと思う」
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