ファンの気持ちを行動につなげるために
加藤:川越さんのお話から、改めてお店での感動体験がモスブランドの根幹であると理解しました。一方でこれだけ飲食の競合も増えると、「モスを好き」という気持ちを来店という行動につなげる工夫が必要のように思います。
川越:まさに、その行動喚起がもっとも頭を悩ませているところです。調査をすると多くの方が「モスが大好き」と答えてくださいます。「では、最近いつ行きましたか?」と聞くと、「半年前…」といった答えも返ってくるのです。店舗数は全国に約1400あるのですが、近所にお店がなく思い立ってもすぐに行けないという方もいらっしゃいます。ただ、どうしたら1日3回の食事の中に、モスという選択肢を入れてもらえるか、そのためのマーケティングが必要だと考えています。
加藤:今の時代は企業が自ら発信をしなくとも、ファンの方が発信した感動体験が拡散するケースも多く、モスのようなファンの多いブランドにはチャンスだと思います。
川越:そうですね。最近、訪日観光客の方が増えていますが、モスで食事をされた外国人の方が、その感動をYouTubeにあげてくださるなど、ファンの方の投稿が新しいお客さまとの出会いにつながっていると感じます。
加藤:ファンの方の動機は「自分がいい!」と思ったものを広めたいという純粋なものですから。
川越:そうですね。そこで「モスカード」のロイヤリティプログラムでも、そのお客さまにクーポンを差し上げるだけでなく、お友だちに商品をプレゼントできるチケットをお渡ししたらどうか、と考えているんです。
加藤:それは、素晴らしいアイデアですね。今は消費者同士がSNSでつながっているので、オンライン上でクーポンを贈り合うような仕組みも実現が可能です。
川越:テレビCMを始めて10数年が経ちますが、もともとモスは口コミで広がったブランドです。私自身も「幻のハンバーガー屋がある」と友達に聞いて、テリヤキチキンバーガーを食べて感動したのが、モスを知ったきっかけでした。時代が変わっても、お店での美味しい体験がすべての基点。口コミされるくらいの体験をベースに、デジタルでできることを考えていきたいですね。
加藤:デジタルを取り入れようとして、テクノロジードリブンになりすぎる企業もあります。しかし本来は、すべての前提にブランドとしての意思があり、その気持ちを伝えるコミュニケーションを助けてくれるツールの一つとしてデジタルがあります。ブランドとしての一貫した方針があるモスさんのような企業こそ、デジタルをうまく取り込んでいけるのではないかと思いました。
編集協力:アイ・エム・ジェイ
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