LINE・宝島社・KADOKAWA担当者に聞く 編集者の採用基準

いかに多様なマネタイズ手法を考えることができるか

——これからの編集者にとって必要とされるスキルについては、どのようにお考えですか。

桜川:ネットは数字でいろいろなことが可視化されてしまうので、ネットならではの法則を見極めて、論理的に解決していく力が必要だと思います。記事がヒットしたら、そこで喜んで終わりではなく、なぜこの記事が受けたのかというロジックの裏付けまで考えられるといい。Webの記事のタイトル付けに対しても、感性やセンスではなく、ロジカルに考えて結果を出すことが求められます。僕は、編集は“説明できる力”だと思っているんです。なぜこのコンテンツに価値があるのかといったことを考えて編集できる素養がないと、デジタル時代を生き抜く編集者としては厳しいのではないかと感じます。

鈴木:まず少し先のユーザーの動きをきちんと想像すること。そして編集とは、作家さんから預かったコンテンツを展開し“ビジネスをつくる仕事だ”という認識を持つことが大事なのではないかと考えています。コンテンツを無料で楽しめるサービスが増えていくほど、有料コンテンツを手に取ってもらうハードルが高くなり、作家をはじめとするクリエイターは苦境に立たされていくのではないでしょうか。編集者がコンテンツをつくるだけではなく、ビジネスの土壌もつくっていかなければ、作家やクリエイターが生計を立てづらくなる。そうすると、文化そのものが危機にさらされる可能性もあると考えています。

藤定:そんな時代だからこそ、自分の企画を単発のヒットで終わらせるのではなくて、事業化まで持っていこうという意思やスキルを持っている人が、重宝されるのだと思います。漫画のコンテンツビジネスなども、そうですよね。自分の企画を出版という枠にとどめず、あらゆるビジネスに広げていく。そうした編集者が増えると、組織としての編集部も強くなれるのではないかと思います。

桜川:メディアに携わっている多くの人の根本にあるのは、何かを“伝えたい”という思いですよね。その思いをベースにしつつ、テクノロジーが進化するなかで、自分自身も柔軟に変わりながらアジャストしていける編集者が、これからの時代に求められるように感じます。

鈴木:ユーザーに対しては、“つくっておわり”という編集だけではビジネスとして成り立たなくなっています。だからこそ、つくったものをどう届け、どう広く展開して楽しんでもらい続けるか。編集はサービス業のようなイメージに変わってきているのかもしれません。

藤定:誰もが情報を発信できる時代において、面白いコンテンツをつくれる人は、一般の人々にもたくさんいます。そのなかでプロとして生き抜いていくためには、やはりお金を稼ぐ力がこれまで以上に求められるように思います。今後は、商品の制作に加え、プロデュース的な仕事までこなせる編集者が、活躍の場を広げていくのではないでしょうか。

本記事は、『編集会議』2015年秋号に掲載されたものです。

『編集会議』2016年春号、3月16日発売予定



藤定修一
宝島社 編集1局マルチメディア編集部 編集長

1999年宝島社入社。『宝島』編集部を経て、『smart』編集部へ。2007年より第2企画編集部編集長としてブランドムックを担当、同シリーズは累計5100万部を突破。現在は編集1局マルチメディア編集部編集長として、ブランドムック、グッズ付き商品といったマルチメディア商品を担当。


鈴木寛子
KADOKAWA 人事部人事課 課長

1989年、リクルート入社。情報システム部、人事部、ゲームファンド会社出向を経て、2006年メディアファクトリー転籍。人事広報を担当し2013年10月、KADOKAWA転籍。人事部人事課課長として合併後の新卒採用なども担当し、現在に至る。


桜川和樹
LINEメディア事業部 副事業部長

リクルート「R25式モバイル」の編集デスクを経て現職。「NAVERまとめ」編集長としてサービスの運営・広告事業を統括する一方、「LINENEWS」の企画・編集も担当。


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