なぜイノベーションがサンフランシスコで生まれるのか?ベイエリアの通勤事情に起業家精神の土壌をみる。

そんなわけで、3年前に引っ越してきてからというものの、ほぼ毎日このカジュアルカープールを愛用しています。どうしても車で出勤しないといけない時などは運転手としても利用しています。一応無言が原則ですが、ひょんなことがきっかけでたまに会話をすることもあります。弁護士や会社経営者(この人はベンツの高級スポーツカーに乗っていました)学校の先生からTwitterやGitHubで働くエンジニア(サンフランシスコっぽい!)。本当に多種多様な人が利用しています。

元をたどれば、1849年のゴールドラッシュからはじまったサンフランシスコでの開拓文化。例えば砂金を採掘するのには丈夫な作業着が必要、そこで生まれたリーバイス・ジーンズ。採掘された砂金を預けたいというニーズに合わせて、Wells Fargoなどのアメリカを代表するメガバンクが当地で誕生しました。こういった新しいものに挑戦する開拓精神と、それが脈々と受け継がれた文化的土壌がベイエリアには根付いているのではないでしょうか。

おいしい野菜を育てるには豊かな土壌が必要です。豊かな土壌を築くには丁寧なケアと長い年月がかかります。土壌を耕し、種を蒔き、絶えず十分な肥やしと水を与える。時には発育の妨げとなる雑草や害虫を駆除することも必要です。そうしてはじめて小さい実がみのりはじめます。はじめての収穫で一喜一憂してはいけません。長期的な視野で丁寧に計画していくことが肝心です。

日本はかつて技術王国として数多くのイノベーションを、しかも多分野で起こしてきました。ところが今現在、それまでトップランナーを走ってきた日本はかつての輝きを失いつつあります。たとえポールポジションの座は譲ったとしても、一方で長年にわたって築き上げた土壌を簡単には朽ちさせてはいけません。スポーツでの優秀なベテラン選手がそうであるように、トップランナーとして走ったからこそ見える視点もあるはずです。短期的なことに一喜一憂するのではなく、長期的な目線でもって、長い年月をかけて耕してきたこの土壌文化を成熟させ、さらに向上することに努めることが今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。そうすることではじめてイノベーションの種が発芽するのだと思います。先代から受け継いだこの土壌は、私たちが次世代へと受け継いでいかねばなりません。

Google, Apple, Facebook, Twitter, Tesla, Uber, Airbnb, Netflix, GitHub
すべてベイエリアから生まれた会社です。

「なぜ今、多くのイノベーションがベイエリアで起こっているのか?」

よく話題に上がるトピックですが、僕は40年前から続くカジュアルカープールにこの答えのヒントがあるのではと感じています。

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川島 高(アートディレクター)
川島 高(アートディレクター)

1981年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2004年に渡米。文化庁が主催する新進芸術家海外研修員として、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) にてメディアアート修士課程修了。アーティストとして作家活動を行う傍ら、アートディレクターとしてAKQAなどの広告代理店にて活動。日本人として初めてGoogleのクリエイティブラボに参画。サンフランシスコ在住。

Facebook: https://www.facebook.com/takashi.kawashima
Twitter: https://twitter.com/kawashima_san

川島 高(アートディレクター)

1981年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2004年に渡米。文化庁が主催する新進芸術家海外研修員として、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) にてメディアアート修士課程修了。アーティストとして作家活動を行う傍ら、アートディレクターとしてAKQAなどの広告代理店にて活動。日本人として初めてGoogleのクリエイティブラボに参画。サンフランシスコ在住。

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