優れたダイレクトメール(DM)活用例を顕彰する第30回全日本DM大賞(日本郵便主催)の各賞が24日発表され、グランプリには石川県加賀市の温泉旅館「山代温泉 宝生亭」のDMが選ばれた。
顧客ごとに名前とオリジナルの説明文を印刷した「金色のバッジ」を同封したもので、常連客の中から選んだ100人に対して送付した。旅館の従業員が銀色のネームプレートをつけていることから、得意客を大事にする姿勢を示す施策として考案したもの。うち84組が1泊2日の宿泊プランを予約するという成果をあげるなど、「VIP客」のファン化に効果を発揮した。
宝生亭は30代の若夫婦が経営しており、普段からブログなどで子育ての様子を発信するなど、気取らないスタイルで顧客と親密な関係を築いてきた。地元の農家団体や老人会などに顧客が多く、石川県内や近県に得意客が多いのが特徴。ほかにも閑散期の4月には「4月のヒマな日カレンダー」と称して、得意客向けに女将が自ら来館を懇願するDMを送付したところ、25%が予約したという。
プロモーションの企画から制作までをこなす専務取締役の帽子山宗氏は、同日都内で開かれた贈賞式で壇上に立ち、女将からのひと言がきっかけでDMに工夫を凝らすようになったと明かした。「『紙(のDM)ばかり出してないで、もっと心のこもったものを送りなさいよ』と。そこで、お客さまの奥様向けに感謝の印としてカーネーションを送ったところ、驚きの反応があった。DMは心を届けるものだと再認識した」と述べた。
このほか金賞には、かみやま農園、ソフトバンク、ベネッセコーポレーションの3社のDMが受賞した。また銀賞8点、銅賞12点、審査委員特別賞2点、日本郵便特別賞5点(複数受賞あり)が贈賞式で発表され、表彰が行われた。
審査委員長を務めた恩藏直人・早稲田大学商学学術院教授は、贈賞式の壇上で「マーケティングはかつては『ハンティング』とも言われたが、今は限られた顧客と長く付き合っていく『関係性』が重要と言われる。こうした中で、DMはさらに大きな役割を果たすだろう」と講評を述べた。
2014年11月から2015年9月にかけて制作され、発送されたDMが対象。応募625作品の中から「戦略性」「クリエイティブ」「実施効果」の3つの評価軸で選ばれた。25点の入賞作品は、29日から3月4日まで、東京・汐留のトッパンフォームズビル1階ロビーで展示される(10時~18時)。
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