第50回スーパーボウル参戦のスモールビジネス、注目7ブランドを振り返る

【4】米国生まれのブランドとしてのアイデンティティを訴求
 WeatherTech「Resources」

WeatherTech(ウェザーテック)は、1989年創業の自動車パーツメーカー。米国では、車のフロアマットといえばウェザーテック、というほど定番のブランドだ。

スーパーボウルCMでは、ウェザーテックがビジネスを続けていく上で最も重要なリソースとして「人」を挙げ、米国の労働者たちを称える。

「私たちは、アメリカにとても大きな工場を建てた。なぜなら、ここには素晴らしい自然資源が豊富にあるからだ。それは土地でも、水でも、動力源でもない。人こそ、米国最大の資源だ」とし、米国の工場で、米国の原材料を使って、米国の人材の手によってものをつくることの意義、メイド・イン・アメリカブランドとしてのアイデンティティを強く打ち出している。

スーパーボウル当日にオンエアした本編のほか、2本のティザームービーを公開する力の入れようだった。日本でも生産拠点を労働力の安価な海外に求めた結果、国内生産機能の空洞化が叫ばれて久しい。国内生産にこだわる姿勢は、同社のブランドの志を強力に示している。

【5】自社サービスの使い方を、面白コンテンツを通じて伝える
 SquareSpace「Real Talk with Key and Peele」

Webサイト構築ツール「SquareSpace(スクエアスペース)」は、コメディ番組『Key & Peele(キー&ピール)』で知られるコメディアン、キーガン-マイケル・キーとジョーダン・ピールを起用した。

彼ら2人が出演するCMを制作するだけでなく、SquareSpaceで制作した特設サイトを起点に、スーパーボウルの試合に合わせて、2人によるライブコメンタリー番組「REAL TALK」を配信。トークの内容は、各種SNS上で、ハッシュタグ「#RealTalk」を使って追いかけることができた。試合と合わせて、ライブに楽しめるコンテンツである。

ピーク時には、テレビの試合中継と合わせて、2万5000人が同ライブストリーミングをセカンドスクリーンとして視聴していたという。ただCMをオンエアするだけではない、スーパーボウルの新しい活用法を示した事例と言える。企画制作を手がけたのは、従来型の広告ビジネスの枠を超える“グロースハッカー”的なビジネスモデルで知られる、独立系エージェンシーのAnomaly。

【6】社長自ら出演!自社制作のCMを放映
 Dollar Shave Club「Zeke」

アメリカ男性用カミソリ市場では、プロクター・アンド・ギャンブル社のジレット・ブランドが圧倒的なシェアを持ち、2位のシック社に大差をつけている。この巨大ブランド2社に挑戦するスタートアップ企業として注目されているのが、Dollar Shave Club(DSC)社だ。

Webサイトにアカウントを開設し、好きなプランを申し込むと、毎月または隔月でカミソリの刃が無料で宅配される。最も安いプランは月1ドルから。

今回放映したCMは自社制作。かつて即興コメディ養成学校に通った経験のある社長のマイケル・ドゥービン氏が出演するスタイルも定番である。男性がシャワーを浴びていると、急にカミソリが話しかけてくる。彼は汚いカミソリを使い続けているが、カミソリいわく「これは汚いのではなく、個性」とのこと。男性の妻が「そろそろこのシェーバーも替え時ね」と言ったかと思うと、ドゥービン社長が登場し、「DSCなら、シェーバー本体を変える必要はない。刃を替えればいいだけなので経済的で、汚いカミソリにしがみつく必要はない」と説明する。

【7】CMから自社サイトに誘引する、コンテンツの工夫
 SoFi.com「Great Loans for Great People」

2011年に創業したSoFiは、米国で注目を集めるフィンテック企業の一つ。低金利での学生ローン借り換えサービスからビジネスをスタート。現在はその他、個人ローン事業へとサービス領域を広げている。以前はクレジットスコアによって審査されていた米国のローンだが、他国からの移民や履歴がない学生などは、それが審査の参考にならないケースがあり、課題となっていた。

その状況を打開するため、SoFi社は独自の基準によって将来的な回収可能性を審査している。ローンの対象顧客層を「全米トップクラスの大学の卒業生」に絞り、将来の回収見込みが高いと判断した場合、低金利での学生ローン借り換えサービスを提供したのである。

CMでは、道行く人々が「Great」かそうでないか(SoFiのサービスが受けられる人かどうか)で次々と振り分けられていく。CMの後半に登場するBrandonという男性は、実際にSoFiで個人ローンを組んだユーザーの一人。同社公式サイトでは、彼が当時のエピソードを語る動画が公開されており、CMから自社サイトに誘引する工夫がなされている。

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