そこで今回は、ヤングカンヌPR部門の昨年の日本代表、村石健太郎さん・石川達也さんに、昨年、今年と日本代表選考審査員を務める本田哲也さん(ブルーカレント・ジャパン)が、日本戦、そして世界戦を制するための秘訣を聞いた。
自分の守備範囲だと思える部門は、全部チャレンジする。
本田哲也さん、以下、本田:
石川君と村石君はフリーランスのプランナーで、PR専業というわけではなさそうだけど、ヤングカンヌPR部門に応募した理由を教えてください。
村石健太郎さん、以下、村石:
普段から「ともかく話題になる企画を」と依頼されることが多く、PRの視点はどの案件にも必要と感じていました。でも、正直言うと僕らはフリーランスだから、ここで日本代表になれば対外的にアピールするチャンスだと思っていたので、PR以外にサイバー部門にも応募しましたし、ヤングカンヌだけじゃなくて、アドフェストのヤング・ロータスにも挑戦していました。代表になるまで、自分の守備範囲だと思える部門は全部やる、という意識でしたね。行くことを前提に貯金もしていて、今年ダメだったら職を変えるくらいの覚悟で臨んでいました。
石川達也さん、以下、石川:
応募の前から思考の準備はしていました。8カ月間毎月、海外エージェンシーの著名なクリエイティブディレクターが出題する社会課題に対して、アイデアを考えるコンペがあるんですけど、それに出たりしていて。気合は十分だったんですが、僕は代表に決まってから急きょお金を貯めたので、ヒィヒィ言ってましたね(笑)。
24時までにコアアイデアを!チーム力発揮のコツ
本田:日本代表になる、という決意の強さが並みじゃないよね。二人は性格も考え方も全然違うけど、以前から組んで仕事やコンペに参加することが多かったのかな。即席じゃない、しっかりとしたチーム感があります。課題に取り組む時の役割分担や時間の使い方にルーティンはあるのかな?
石川:もともと大学のゼミが一緒で、友人でもあるし、フリーランス同士として一緒に組んで仕事をすることも多いです。こういうコンペの時、最初の2~3時間は村石君にアイデア出しに専念してもらい、僕は課題の深掘りに費やします。課題について徹底的にリサーチして、原因や理由を明らかにするんです。そうすると、方向性や着地点がある程度見えます。また、あとでアイデアを選別する時の基準になります。
村石:ずっとブレストしていても、息がつまってしまうので、面と向かってというよりは「1時間後に電話する~」という感じで、それぞれ考えたアイデアを持ち寄るというスタイルで進めていました。基本的に、アイデアを考えるのは普段から一人でやるので、ペアを組んではいるのですが、案を一人で考える時間を確保することは重要だと思います。また、こういうコンペはたいてい、課題発表から約24時間の制限で企画提出となることが多く、時間の使い方が難しいんですよね。個人的な目安としては、発表当日の夜中までにコアアイデアが決まると、アイデアを企画書でどう説明するか? の部分により多くの時間を割けるようになるので、時間的にも精神的にも余裕が生まれます。ポイントは「24時までにコアアイデアを」です!
石川:そして、相手とディベートじゃなくてディスカッションできるのって大切だと思います。向き合う姿勢の話ですが。ディベートだと、自分の案がいい、という前提で話をしてしまって相手を説得してしまおうとするので。コンペの時って意識しないと盲目的になってしまいます。相手の企画も認めて、対等な立場で「議論」する。その後は役割分担。アイデアが決まると、企画書のつくりこみをするのが僕で、プレゼンのスクリプトを考えるのが村石君です。お互いがフィニッシュに向けて、それぞれのパートを120%で詰めていくことができるのは大切だと思います。そういうチームで臨めるのが理想的じゃないですかね。