全日空商事は3月1日、運用型広告を扱う新会社を立ち上げる。主に全日空(ANA)グループによるネット広告配信の効率化や適正化を担当する。
オフィスクロコ(井橋孝文社長、東京・渋谷)と共同出資する合弁会社で、出資比率は全日空商事が51%、オフィスクロコが49%。資本金は2000万円。社名はANA-クロコ・ストラテジック・ソリューションズ、通称をA-Kross(エークロス)とした。従業員は、全日空商事からの移籍と新規採用で十数人規模。
ANAグループのデジタルマーケティングは、全日空・全日空商事・エークロスの三層で進めることになる。ANAの宣伝・Web担当であるマーケットコミュニケーション部は、公式サイトなどの「自社メディア」、外部への広告出稿、ソーシャルメディアでの話題喚起といった各領域を管掌する。うち、広告枠の買い付けなどは、全日空商事の広告メディア事業部が担当する。新会社のエークロスは検索連動型広告やアドネットワークでの広告運用を担う。
また、エークロスは、2015年に構築した同社のデータ・マネジメント・プラットホーム(プライベートDMP)も運用する。プライベートDMPは、自社で持つ顧客情報や購買データなどを蓄積し、外部のWebサイト訪問者データなどと合わせて、効率よく適切な広告配信を行うためのしくみ。
新会社の代表取締役・最高経営責任者(CEO)は、全日空商事の広告メディア事業部長の辛川敬氏が就く。3月1日時点では、エークロスと全日空商事の兼務となる。オフィスクロコの井橋孝文氏は、エークロスの代表取締役・最高執行責任者(COO)を務める。また、全日空も取締役を1人派遣する。
いわゆる「インハウス」(社内部門)」の専任チームを設けなかった点について全日空商事は、「合弁相手のオフィスクロコの知見を生かすこと、当該業務の専門性を持つ人材を社内で確保・育成するよりも専業会社として行うことのほうが、効果的・効率的と判断した。結果、グループ内企業として設立を決めた」(全日空商事・広報)と話した。
エークロスはグループ外企業の運用型広告オペレーションのサービス提供や、グーグル、ヤフーなどの持つアドネットワークの広告枠販売も行う予定。電通調査の「2015年日本の広告費」では、2015年の運用型広告費は前年比22%増の6226億円だった。