株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
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2016年1月、アルビオン、ナノキャリアは両社の共同開発プロジェクトとして男性向けの新ヘアケアブランド「Depth」を立ち上げ、厳選した美容室だけで先行販売を開始した。
また商品開発には、ヘアサロン「Belle」も参画。商品の販路としても重要な役割を担う。同プロジェクトには企画段階から、ブランドコンサルティングを手掛けるFRACTAが参画。アルビオンのスキンケア商品の開発力、ナノキャリアの最先端の医療技術、そして日頃お客さまと接し、ヘアケアに対するインサイトを把握しているBelleと3社がそれぞれの強みを持ちよりながら、一つのブランドをつくりあげてきた。その軌跡を追う。
異業種の2社が最高峰の技術を結集
——「Depth」立ち上げのきっかけとは。
染谷:ナノキャリアさんとは、2013年にアルビオンの美容液「ECLAFUTUR」を開発した時から、お付き合いがありました。「ECLAFUTUR」は発売以来、累計で100万本以上を売り上げる大ヒット商品となり、両社の取り組みをもう一歩進めたいという話に。女性用スキンケアで実績ができたので、これまで手を付けていなかった領域にチャレンジしようと男性用しかも、ヘアケアというカテゴリでのブランド開発に至りました。
「ECLAFUTUR」はナノキャリアさんとの共同開発ですが、ビジネス上の見え方はあくまで原料の供給という立ち位置。そこで今回は企画からネーミング、デザイン、コンセプト、プライスといったところまで全て含めて、対等な関係で一緒に仕事ができないか、というのが企画の発端です。医薬品開発のナノキャリアさんが、最高の技術を化粧品のために開発してくれた。本当にうれしかったですね。
松山:医薬品ではなく、化粧品だから軽く見るといったことは当社にはありません。当社は、技術を使って人々のQOL(Quality of Life)を高めることに貢献したい。病気の方のQOLはもちろん、コンプレックスを抱える方の生活の質の向上に貢献できることがあれば、と今回のプロジェクトに参加をしています。
——FRACTAさんが関わるようになったのはいつからですか。
河野:2013年末くらいですね。
染谷:アルビオンの社内にも、もちろんデザインやマーケティングの部門がありますが、そこで開発してしまうと、どうしても従来のアルビオンっぽさから抜けられなくて。今回は、本当にゼロベースでブランドを立ち上げたかったので、FRACTAさんに相談をしました。
河野:当時、販路をECだけに想定し、この領域に強い私たちに声を掛けていただきました。話を聞くと、両社のチャレンジは米国のスタートアップのような勢いがある。しかしアルビオンもナノキャリアも有名な企業だけに、普通に発売してしまうと、変な意味で面白くないものに見られ、たくさんのブランドの中に埋没してしまうのではないか、と懸念を抱きました。挑戦する姿勢まで表現した方がいいし、そのためには売り方も含めて、これまでのしきたりにとらわれない方法論があるのではないか、と考えるようになりました。
——そこから、川嶋さんが加わったのですね。
河野:実は僕は7年ほど前から、川嶋さんに髪を切ってもらっていて、そこでよくスカルプケアなどの相談もしていて、頼りになる存在でした。僕自身、川嶋さんに相談しながら、いろんなスカルプケア商品を試してみたのですが、なんというか、多くの商品が手に取ると「負けたな…」という気持ちを感じるものが多かったので、新ブランドのコンセプトを聞いた時に、自分自身も欲しいものは、まさにこれだ! と感じました。
川嶋:育毛製品のようなコンプレックス商材って、購入のハードルがありますよね。私たちのお店でも、これまでにいろいろな商材を扱いましたが、なかなか売れない。お店で紹介しても、その場では買わずに、家に帰ってネットで買う人が多いようでした。
河野:そこで「Depth」は、美容室で紹介した後、お客さまにはECで購入していただく。ただ美容室で紹介したお客さまにはカウンセリングを担当した美容師のカードをお渡しし、美容室での紹介とECを融合する新しい仕組みをとっています。
——開発コンセプトはどのようにでき上がったのですか。
染谷:男性にとって育毛は、女性にとってのアンチエイジングと同じくらい重要なテーマです。女性の場合は、若いうちから当たり前に肌のお手入れをしている。頭皮も同じく肌であるのだから、男性の薄毛の問題にも、若いうちから、しっかりお手入れをする発想が必要ではないか、という話になりました。そして、その方向で研究を進めた結果、洗顔料、乳液、化粧水、美容液とスキンケアと同じようなラインナップで、商品を開発するというコンセプトが決まりました。
——ブランドのターゲットとは。
染谷:デザインや香りなどの検討段階では自分自身を大切にする意識の高い30代前半の男性を想定していました。でも実際の販売の段階ではあまり年齢の区切りは意味がなく、若さを維持したいと考える、自分自身に投資する意欲のある意識の高い男性全てがターゲットだと考えています。
松山:実際、1月15日にプレスリリースを出したところ、30代から60代の方まで幅広い年代の男性からお問い合わせをいただきました。「意識の高い方」は年齢には関係ないのだと感じましたね。
川嶋:ナノキャリアさんが株主の方向けにブランドのリリースをした後、大阪から買いに来てくださったお客さまもいました。
松山:当社の場合、個人株主の方々が3万名ほどいらっしゃいますが皆さん、私たちの技術を信じてくださるシンパのようになってくださっているからですね。
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