激戦!炭酸飲料市場で、牛乳メーカーの商品が45年も残っている理由

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
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小さくても、長く続く企業には、確実に他社にはない独自性があります。自分たちの強みに立ち返ることで、資源を集中すべき市場も見えてくる。注目企業の経営トップに、「小さな組織の戦い方」を聞きました。

重山大海
営業企画部 商品企画課 課長

平田勝一
営業企画部 企画管理課 課長代理(写真)

重山氏は商品設計、平田氏は広告宣伝を担当する。


コカ・コーラや三ツ矢サイダーなど歴史あるブランドが多く、厳しい競争環境にある炭酸飲料市場。その中で、今年発売45周年を迎えるのが、宮崎県都城市にある牛乳メーカー 南日本酪農協同がつくる「スコール」だ。乳性炭酸飲料の先駆けとして生まれ、これまで九州ならびに関西地区を中心に売上を伸ばしてきたが、近年は関東をはじめ全国各地区にも積極的に展開している。成熟市場でいかに大手メーカーと戦ってきたのか、マーケティング責任者の二人に話を聞いた

――「スコール」はどのような経緯で生まれた商品でしょうか。

平田:初代社長である木之下利夫のひらめきから生まれた商品です。釣りが大好きで、いつも牛乳や炭酸飲料を一緒に抱えて出かけていたのですが、あるとき「牛乳のサイダー割りはできないかな」と思いついたようです。そこで、牛乳とサイダーを混ぜても凝固しないように研究開発を重ねて生まれたのが「スコール」です。当時も今も、牛乳メーカーがつくった炭酸飲料というのは珍しいと思います。

――味は当時から変えていないのですか。

平田:ほとんど変えていません。発売以来、乳由来の原料やはちみつを使用しています。コストを下げようとすると人工甘味料などを使用しがちですが、原料へのこだわりが、スコールの変わらない味をつくっています。

重山:糖類について言うと、スコールは砂糖、果糖ブドウ糖液糖の順で使用しています。通常、コストを下げるためには果糖ブドウ糖液糖を使用し、足りない分に砂糖を追加します。スコールは原料にこだわる分、原価を下げられないジレンマがありますが、やはり風味を第一に製造・販売を行っています。

――商品プロモーションを目的としたキャンペーンも行っていますが、ターゲットはどの層でしょうか。

平田:いまは高校生をターゲットにしたキャンペーンを準備しています。45年も経つと、当時の10代も今は50代になるため、ブランドの若返りが必要です。今年は6月から、「放課後」をテーマにした企画を予定しています。

重山:競合他社商品と比べると、スコールのほうが購入する年齢層が高いというデータがありました。決してそれが悪いわけではないのですが、今回は高校生を中心にコミュニケーションを図ることで、新たなファン層を獲得する狙いがあります。

関東地区への進出

――得意とする九州や関西地区から、関東での販売も強化しています。

重山:九州・関西地区では量販店でも多く販売してもらっていますが、関東ではコンビニエンスストア中心の展開となっています。我々は10数年前から関東を中心にしたコンビニエンスストアと「留型」のスコールフレーバー展開を実施しています。

平田:スコールは乳性炭酸飲料なのでさまざまな果汁などに合うことと、大手メーカー様と比べると我々の組織が小さい分、小回りよく動けたことが良かったのかなと思っています。当時は、今ほど大手コンビニエンスストアもPB(プライベートブランド)をつくっていませんでしたし、関東のお客さまに知ってもらえる機会になりました。

重山:今ではSNSがありますから、例えば「◯◯チェーン限定」とうたうと、すぐに拡散されて、店舗に来てもらうことができます。コンビニチェーン様にとっては、それが重要な来店理由の一つになりますから、今後とも我々のご協力できることであれば、ご一緒していきたいと考えています。

――新しい販路拡大にも取り組まれているのでしょうか。

重山:消費者との接点を増やすということでは、昨年5月以降、西日本や東北などのエリアにおいて日本コカ・コーラ様の自動販売機での販売を開始しました。販売も好調と聞いており、「当社が未開拓であった市場やお客さまがまだこんなにもあったんだ!」と、市場の可能性に気付かされたという面がありますね。自販機を通じて、スコールを目にするエリアを広げることができますから、これをチャンスに、もっといろんな方に飲んでいただきたいですね。

「Dairy(デーリィ)」ブランド統一への動き

――南日本酪農協同にはスコール以外にも、今年で48年目の「フルーツサワー」、昨年30周年の乳酸菌飲料「ヨーグルッペ」などのロングセラーブランドがあります。なぜ今もなお残り続けていられるのでしょうか。

重山:フルーツサワーについては何度もやめようと検討されてきましたが、固定客の皆さんに支えられ、細々と生産し続けていたところ、時代を経て、容器や味わいに「懐かしさ」という価値が生まれてきたという面があるかもしれません。

平田:フルーツサワーの製造機械は現在量産されておらず、国内で珍しい機械になっています。これまで長く続けてきたことが、当社にしかない特徴になっていると考えます。

(続きは本誌をご覧ください)


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